優秀な技術者になる・優秀な技術者を育てる  その4 豊富な知識獲得への努力

情報 知識 知恵

 人間は口から様々な食べ物を食べ、口で咀嚼してのみ込みます。胃で消化して、腸で体に必要な栄養素を吸収します。そして肝臓に蓄えられて、必要な時に各器官に送られて、各栄養素が活動源になったり、組織に組み立てられていきます。

 技術者にとって「情報」は食べ物、栄養素が「知識」、栄養素が肝臓や組織の中でブドウ糖等のすぐに活動に役立つように組み替えられたものが「知恵」のようにたとえられます。

技術者は常に情報を手に入れて、知恵の形まで高めておかなければ、技術活動はできません。情報のままでは単に知っているだけとなります。「知恵」とは会得しすぐに使えるようになったものと言えます。

知恵に満たされている技術者が優秀な技術者の条件の1つと言えます。そのために、常に新しい情報に接しなければなりません。情報に関しては、どん欲に集め、それを咀嚼して消化し、いつでも役に立てる知恵の形にして、沢山貯えておかなければなりません。

情報収集

技術者の業務時間の10~20%は情報集めに使うべきと考えています。今はほとんどの情報がインターネットから得られるようになったので大変やりやすくなったと思います。 最近は学会もオンラインで聴講できます。文献、特許も検索できます。有識者にオンラインで教えを乞うこともできます。

インターネットから検索できる技術情報の代表はJST(国立研究開発法人科学技術振興機構) で文献特許等様々な検索ができます。例として

 https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja

 https://jglobal.jst.go.jp/      

スタンフォード大学やMITの講義も受けられます。

https://business.ntt-east.co.jp/bizdrive/column/dr00091-003.html

https://boxil.jp/mag/a3399/

情報収集のサイトを紹介するページもあります。

https://miraie-group.jp/sees/article/detail/engineer_information_site

 

しかし、競争相手も同様にできることを忘れてはなりません。

 

ベースとして必要な知識

英語、コンピュータハード&ソフト知識、大学時代の事業内容(教科書、ノート)

 英語は情報集めに非常に大切なことは、耳にタコができるほど聞いていると思います。私の反省から独学は難しいです。会話は素直に教室に通うべきです。モチベーション維持のためにも教室に通うことをおすすめします。

 日常英語もさることながら、非常に大切なのは英語の技術文書が抵抗感なく読めることです。特にTechnical termを覚えるほどスムーズに技術文書が読めるようになります。技術論もできるようになります。

大学時代に使った教科書は捨てないことです。学んだことを振り返るとき、使った教科書がベストです。

 

技術情報源

(1)学会、学術雑誌

 学会、学術雑誌は技術情報の中で最も大切な源です。自分の専門の学会への参加、学術雑誌の購読は最も重要です。ただし、注意点はあります。大学からの発表、論文は非常に勉強になりますが、チャンピオンデータで、完全なる検証ができていない可能性があります。企業からの発表は企業秘密を避けています。それを認識した上で、こちらもgive and takeで発表もしなければなりません。発表することにより、同じ専門の人との和ができて、様々な情報が入ります。発表の本音も聞けます。

 加えて、学会に参加した時、招待講演はできるだけ聴講することを進めます。招待講演は幅広く技術の動向を感じ取れます。講演者と交流を持つことも進めます。質問すれば講演者との交流のきっかけもつかめます。

 

(2)特許

  特許は玉石混合で皆様も苦労しておられるのではと思います。学術論文と異なり、実証されていなくても、論理的に間違いがなく、新規性があれば特許になります。競合他社にとって本命特許は偽装してすぐには検索されないようにしているかもしれません。

大学等の公共研究機関の特許も気に掛けることをお勧めします。今話題のフレキシブル太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」は日本で発明されましたが、発明者の桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授は特許申請料が高くて取得していないとのことです。特許維持費も少なく、企業から声を掛けられない場合はすぐに放棄される場合も多いです。

 

(3)専門書、専門誌、業界雑誌、新聞、

 日経産業新聞日刊工業新聞等の新聞は必ず自分で購読してでも目を通したら良いですね。世の中の動向が分かります。今はデジタル版もありますが、一目で見渡すには紙媒体の方が優れています。私の分野の関係では電子デバイス産業新聞、電波新聞等もあります。

 

(4)展示会、講演会 (5)社内報告書、データベース

 積極的に利用されていると思いますが、講演会の後の懇親会は参加した方が良いです。懇親会は役職者の集まりのように感じますが、若手技術者も奮って人脈を作るチャンスです。

 

(6)恩師、先輩、知人、専門家、

 徒然草に「先達はあらまほしき事なり」。これらの方々とのパイプが最も大切なのは十分理解されていると思います。非常に価値ある情報をいただけます。

 よく「失敗の勧め」を耳にしますが、無知による失敗は絶対してはなりません。諸先輩方との雑談の中で先輩方の失敗談も聞かれます。

 できれば海外の方との懇談も広めたいです。

 

( 7 ) お客様

 お客様は技術者にとっても重要な情報源です。将来ニーズ、自社製品の不具合、競合他社の情報等です。技術者がお客様と接する機会を増やすことは、技術者個人では難しいので、企業側の課題と思います。

 

何をしたら良いか どうするか

 今まで述べてきましたが、ほとんどは今更と思われると思います。しかし、本当に実行しているかとなると、確信できないのではないでしょうか。どのように努力したら良いでしょうか。

 

時間を確保できているか、時間をつくる

毎日の納期に追われている開発業務の中で、技術情報収集のための時間を取ることはかなり難しいのではないかと思います。前述のような「技術者の業務時間の10~20%は情報集めに使うべき」をどのように実行できるかです。しかし、時間は見つけるものではなく作るものと言われています。

 

                                             時間を作った者が勝ち

 

  最も良いのは、スケジュールに組み込むことです。就業時間中に机に向かって文献を読んでいることを常態化するのも勇気がいるのではと思います。自宅の書斎で文献を読んでも、なかなか集中できません。私は幸運なことに、電車で座って通勤でき、一番集中できました。会社の図書室も良いと思います。学生はよくカフェで勉強しています。

 すべてにおいて、「情報を制する者が勝つ」(孫子の兵法)と言われます。技術者の場合、情報に接する時間を作った方が勝ちとなります。

 

集めた情報を知識にする、発表会の提案

 情報を集めただけでは役に立ちません。知識、知恵までに高めなければなりません。一つの提案ですが、グループ内で定期的な集めた情報の発表会を開くのはいかがでしょうか。仕事の進捗、成果の発表会は日常的に行われています。しかし、得た情報の発表会は企業ではあまり耳にしません。

発表するには集めた情報を良く理解し、咀嚼し、整理されていなければなりません。得た情報を知識までに高めることができます。情報集めのノルマの働きもします。情報の共有化になります。

ただし、知恵にするまでには知識を使った経験が必要となります。経験を積むしか妙手は無いと思います。

情報の整理整頓、データベース

 集めた情報をそのままにしておくと、散逸し、忘れ去られてしまいます。データベース化をお勧めします。グループで統一規格化し、サーバーに保管すると情報の共有化にもなります。

 下図は例です。エクセルは様々な機能があるので便利です。

 

情報収集の範囲、逆三角形型人材

 よくT字型人材になれと言われます。専門分野は奥深く、また幅広い知識を持てとのことです。しかし、今はチームワークで技術開発を行う時代です。「隣は何する人ぞ」とチームメンバーの内容を理解しなければなりません。上辺だけ幅広いT字型では連携プレイは上辺だけになります。 私はあえて逆三角型人材になれを言います。自分の専門技術の周辺も、それなりに深く知る必要があります。それにより、他のメンバーの仕事内容を理解できるようになります。下左図の共有知識の面積を広げることです。

お互いを理解できると堅固なチームワークを作れます。

「秋深き 隣は何を する人ぞ」(芭蕉)

お隣が何をしているか理解するにはある程度お隣の専門知識を知る必要があります。

 

 

時間をつくる

集めた情報の発表会

集めた情報のデータベース化

逆三角形型人材

 

一休み オオタカ

  今回は今までに都内公園で撮影しましたオオタカの写真を載せます。タカの仲間は多数いますがオオタカは一番名の知られた代表的なタカではないかと思います。精悍さを感じさせます。  

 

 

一般社団法人光融合技術協会の技術紹介 その4  

 光学薄膜(反射防止膜)の設計手法 後編

                 一般社団法人光融合技術協会は https://www.i-opt.org/

2.広帯域反射防止膜

 一般的な広帯域反射防止膜は可視光域(λ=400~700nm)を反射防止する目的で開発されてきた。反射防止膜の層数を増やすことで、振幅条件、位相条件に合致する解を多くする事で広帯域化を可能としている。可視光域の広帯域反射防止膜の基本形は次の3層構成である。図3に反射率特性を示す。

光学膜厚:1M,1L(λ/4)  2H(λ/2)    設計波長:λ

現在、実用化されている広帯域反射防止膜は、この3層構成を基本として等価膜などにアレンジしたものがほとんどである。この基本3層構成を基にした等価膜の考え方を図4、図5に示す。中間屈折率層及び高屈折率層をL(低屈折率層)/H(高屈折率層)/L(低屈折率層) の3層構成、またはH/L/Hの3層構成に置き換えることで、近似的に最適な中間屈折率層に等価変換する。屈折率の最適化はL,Hの膜厚比を任意に変えることで、最適な解を求めることになる。

3. 4層λ/4構成広帯域反射防止膜と等価膜広帯域反射防止膜

膜厚がλ/4構成の反射防止膜でも層数を増やすことで、基本3層反射防止膜に比べて、反射率を低減させることは可能である。基本3層構成に1層増やした4層構成反射防止膜の設計例を図6に示す。同様に基本3層構成反射防止膜を5層等価膜仕様にした設計例を図7に示す。等価膜構成の膜設計を行う上で重要な点は、蒸着条件の多少のバラツキがあっても屈折率変化の少ない材料を選択することである。等価膜

 

構成の膜設計を行う上で重要な点は、蒸着条件の多少のバラツキがあっても屈折率変化の少ない材料を選択することである。等価膜仕様では、λ/4より非常に薄い膜厚で構成されるために、膜厚制御の原理上、膜厚精度が蒸着材料の屈折率変化に左右されるためである。

 

 

今回はここまで、次回をお楽しみに