優秀な技術者になる・優秀な技術者を育てる  その7 開発スケジュール管理

優秀な技術者になる・優秀な技術者を育てる  その7 開発スケジュール管理

 

「無理をさせ 無理をするなと 無理を言い」

昔、このようなサラリーマン川柳があったことを覚えています。ひょっとすると課長が悪いのではなくて、あなたのスケジュールが詰まっていることを報告できていないのではないのでしょうか。

開発プロジェクトを計画的に成功させた代表的例はアポロ計画ですが、巨大すぎて世界が違います。今回は、一般的な開発プロジェクトにおいてスケジュール管理の大切さについて考察してみたいと思います。

 

1.スケジュール策定前にすべきこと。

開発企画はトップレベルで行われるので、ここでは企画ができた後、開発スケジュールに落とし込むときしなければならないことに触れていきます。

 

開発課題のブレークダウン、各項目の成果の明確化見える化

 このブログの「モチベーション 後編」において最終目標を系統立てて、分解して、1週間ごとの目標に落とし込むことを推奨しました。開発スケジュールでも、1週間毎、少なくとも2週間毎の目標に落とし込むことが大切です。さらに目標は定量的に表す必要があります。これが詳細なマイルストーンとなります。

 このように、詳細なマイルストーンに落とし込むために前回、紹介しました。ドリルダウンツリーがあります。最近はWBS(Work Breakdown Structure)とも言うようです。定量的なマイルストーン策定のためのドリルダウンツリー例を示します、

 計画の進捗がメンバー全員に一目で分かるようにしなければなりません。そのために定量的なマイルストーンが必要です。

 開発プロジェクトの開発項目の代表的分野は「機械系」「電気系」「ソフト系」です。これらの中でもっも開発担当者が何をやっているのか見えないのが「ソフト系」と思っています。ソフトの開発担当者がある日突然病気になり入院、静養しなければならなくなったとき、代わりの担当者があくる日から開発を引継ぎできますか。最悪の場合、振り出しに戻って開発しなおすこともあり得ます。それほどソフト開発の「見える化」は特に大切と思っております。もちろん他の分野でも大切です。

 今はソフト開発ツールが整ってきました。例えば私の分野ではレンズ系設計ソフト等があります。一昔はアセンブラとかC言語で開発されていましたので私には中身がまるでわかりませんでした。しかし、今でもソフトを甘く見てはいけません。

 ソフト開発の見える化の重要性については以前から論じられており、開発体制がしっかりしているかの評価基準がありました。CMM®(CMMI®)では、組織のプロセスの発展段階を5段階の成熟度レベルでモデル化しています。その成熟度レベルをモデル化したものが下表です。詳しくは次のURLの記事をご参照ください。

https://www.compita-japan.com/kaisetsu/what-cmmi-2.html

 

 私はソフトウエア開発の見える化のための具体的手法については詳しくありません。そこで、インターネットで調べました。その中で目に止まった手法には、下記2点がありました。特にソフトウエアに特化していませんが、ソフトウエア開発を強く意識した手法に思います。

   https://www.splunk.com/ja_jp/data-insider/what-is-ci-cd-pipeline.html

  • カンバンボード

   https://www.atlassian.com/ja/agile/kanban/boards

是非とも参考にしてください。

見える化は非常に大切です。特にソフト開発を甘く見てはなりません

 

2. スケジュール表の作成

これは全体の中のユニットAの開発スケジュールを例に取ってあります。特徴を箇条書きします。

  1. 全体の最下段はマスタースケジュールです。
  2. 上の段はユニットAを担当するチーム全員のスケジュールです。
  3. ▲はマイルストーンです。
  4. マイルストーンは2週間間隔程度で記入することを進めます。
  5. 斜めに引かれた矢印はそれぞれの担当の成果を誰にいつまでに渡すかを表しています。
  6. この印が急峻であるほど、スケジュールが詰まっていることを表しています。
  7. マイルストーンには定量的目標値を定め、別途、チームで共有します。

裏のテクニック

 1. 完成に要する見込み時間に10~15%のサバを読みましょう。

   予定外の追加の仕事が入ります。能力の過信があります。

   遅れると他のメンバーに迷惑が掛かります。

2. 一部開発を委託したとき、頼んだ相手にも同様なスケジュールを書かせましょう。

   頼んだ仕事は多分、遅れます。

3. スケジュール表は皆の見える所におきます。

   引き出しやファイルに入れてはだめです。

4.難易度の高い要素のコンテンジェンシープランは最初に立てておきます。

   仕様ダウンとなりますので経営的判断が必要となります。

   壁にぶつかってから立てたのでは遅くなり、手遅れになります。

 

3. スケジュールフォロー

 スケジュール表を作ったら、それで完成ではありません。これを基にフォロー会議を定期的に行います。前述のスケジュール表の中でDRとあるのはデザインレビューです。DRではその時点での完成したものを皆の前で発表して評価を仰ぎ、各要素を統合して、計画通り開発が進んでいるかを判断します。小班内では1週間ごとに、全体では1か月毎に普通行われます。計画通りに開発が進んでいない場合の対策審議も重要です。

 スケジュール表例の赤い折れ線は各ユニットごとの進捗の判定結果です。スケジュールの進捗判定は自己判断しないでください。デザインレビューの席で定量マイルストーンを参考に判断はプロジェクトマネージャが行います。

 デザインレビューの結果、進捗遅延等の不具合が生じたとき、スケジュールを修正しますが、元のスケジュールに色を変えて加筆するか、新しいシートを作成しても元のスケジュールは目につくところに置いてください。反省の材料となります。過去の遅れは「チャラよ」としないでください。

 チームの他のメンバーの進捗にも気にしてください。火の粉が降ってくるかもしれません。

  1. フォロー会議は定期的に行う。チームは1週間毎、全体は1か月毎に。
  2. 進捗はプロジェクトマネージャが定量化されたマイルストーンを基に判定する。
  3. 過去の遅れを「チャラ」にしない。反省の材料とする。
  4. 他のメンバー進捗にも注意を向ける。

 

4.全体まとめ

  先ず「見える化」から始めよう

 

一休み ジョウビタキ

 今回も都会の公園で冬季見られるジョービタキを載せます。撮影はすべてホームグラウンドの洗足池公園です。通常、鳥はオスの方がカラフルでかわいいのですが、私の好みはジョウビタキに限ってはメスの方が目がクリクリッとしていてかわいいです。冬に公園で探してください。春先までいるはずです。



一社)光融合技術協会社団法人光融合技術協会の技術紹介 その7

        光融合技術協会による海外技術開発機関との連携の支援・調整  Part1/2

  私共の鈴木理事はドイツを代表する研究所フラウンホーファー研究所の中のFEPの日本代表を兼任しています。この関係から海外の研究機関と密接なつながりがあります。その一端を下記鈴木理事のスライドを通してご紹介いたします。この件に関しましてお問い合わせがある場合はkoichisuzuki@surftech.co.jp あるいは akira.ono1257@gmail.com 

にご連絡ください。

一般社団法人光融合技術協会のホームページはhttps://www.i-opt.org/です。

次回に続く


 

 

 

 

 

 

優秀な技術者になる・優秀な技術者を育てる  その6 発想力

優秀な技術者になる・優秀な技術者を育てる  その6 発想力

 発想力と創造力、似たような混同しそうな言葉ですが、前者は新しいアイディアを生み、後者はそれを具現化することです。今回は先ずは発想力についてお話しします。

 

ゼロからアイディアを生み出すことはまず不可能で、普通は1+1=3のケースです。

2つ以上の独立した知識の組み合わせ、工夫することにより、今までにない新しい価値を生み出すことです。

例えばアインシュタインの相対性原理ですが、ゼロから考え出されたものではありません。逸話になりますが、ガリレオ・ガリレイの相対性実験とマイケル&モーリーの光の速度測定実験の結果等を深く吟味することにより生み出されたと言われています。

ガリレオの実験では、動いている船のマストの上からものを落とすと、船上ではまっすぐ落ちてきます。しかし、岸から見ると、物は船と共に動いているので、物は弧を描いて落ちてきます。岸から見た方が長い距離を描いて落ちてくることになります。観測者によって変わる事を発見しています。

 一方、マイケルソンとモーリーは干渉計の1軸を南北に、他方の軸を東西に向けて干渉縞を観察しました。次に、90度回転して同様に観測しました。もし、そのころの理論による光がエーテルの中を進むならば、東西は地球の自転運動方向なのでガリレオの相対性原理から90度回転前後で干渉縞が変わるはずでした。しかし、変わりませんでした。これは観測者によらず光の進む速度は変わらないことを示しています。(マイケルソン・モーリーの実験 - Wikipedia)

 アインシュタインはこの実験結果から有名な相対性原理を導き出しました。さらに理論構築にはリーマン幾何学の助けを借りました。リーマン幾何学を紹介したのは友人です。

 このように、偉大な発想には幅広い知識、知人からの助言等を土台にしたひらめきが必要となります。

発想の瞬間はいつ?

 ニュートンの有名な逸話に、リンゴが木から落ちるのを見て、万有引力の法則を思いついたとのことです。小石川植物園にそのリンゴの木の子孫が植えられています。アイディアに悩んだらその木を見に行かれることをお勧めします。

 アルキメデスはお風呂の中で王冠の比重から真偽判定する方法を発想しました。

 これらは、実験室や机の上で発想していません。仕事に没頭しているときより、リラックスしていた時に、ふっと思い付くことがあります。人間の脳の仕組みに理由があるようです。息抜きしているとき、脳の中の回路が断片的な記憶をフレキシブルにつなげたり、切ったりするようです。

ひらめきと記憶の正体 脳の解明が認知症治療につながる | NHK健康チャンネル

ただし、単に息抜きをしていても何も生まれません。それなりの生みの苦しみが必要です。

 

発想に至るまでの必要な過程

発想のために必要な要件は

  • 課題が明確なこと
  • 課題について使命感を持っていること。常に思案していること。たまに息抜きが必要なこと。
  • 専門分野以外に幅広い知識を持っていること、さらに幅広い分野での相談相手を持っていること。
  • 出来れば、ブレインストーミング、TRIZ等の手法を試してみること。

が挙げられます。

 

  • 課題が明確なこと

上司から今の製品の性能を向上させて売り上げ向上を指示されたとします。指示は抽象的です。先ずは何の性能を向上させれば良いか明確にしなければなりません。このような時の手法として下図のようなドリルダウンツリーで分析していく方法があります。この表から抽象的な命題から具体的課題にブレークダウンしていく過程が分かると思います。

次にブレークダウンした開発課題群の中から何をどのように実行していくかの作戦を練らなければなりません。開発企画の立案です。そのためには 「お客様の振る舞いを見る、お客様の声を聞く」が必要です。

「お客様の声を聴け」とよく言われます。非常に大切です。ただし、お客様の声をそのまま鵜呑みにするのは問題があります。不具合点を針小棒大に言ったり、本質からズレたことを思い込みでいう可能性があります。

 昔、教育で「お客様の振る舞いを見よ」との話がありました。ライトバンの設計者に上司がスーパーの駐車場に行って良く観察してこいと指示しました。ライトバンの主なユーザは主婦です。主婦が毎日買い物に使っています。どのように使われているか、自分の目に焼き付けてこいとのことです。

 次機種の企画を行うには、技術者が開発担当する製品がどのような使われ方をしているか肌で感ずる必要があります。真のニーズを知れば次機種には何を性能向上すべきか課題が明確になります。使命感も生まれます。

 

(2)  課題について使命感を持っていること。常に思案していること。たまに息抜きが必要なこと。

    現状機種の技術から企画した次機種開への技術ギャップが解決すべき課題となります。このギャップが大きいほど、お客様の望む姿に近いほど、達成した時、競合他社に差を付けられます。達成感もあります。

 課題の解決には通常新たな発想が必要です。新たな発想を必要しない次機種はすぐに他社にまねされます。技術者たるもの、言われたことしかしないのでは何も生まれません。使命感を持って大きなチャレンジに挑戦してほしいです。使命感が強いほど、解決しなければならない課題が片時も頭から離れません。

 このような追い詰められた状態で、散歩するなり、お風呂に入るなり、ほっとした時にふと良い考えが思いつくようです。ニュートンも、アルキメデスもしかりです。脳の構造によるとのことです。実験室に籠ってばかり、机にかじりついてばかりでは使命感が強くとも、良い発想も生まれません。

 

(3)専門分野以外に幅広い知識を持っていること、さらに幅広い分野での相談相手を持っていること。

 しかし、熱意と使命感と息抜きだけでは新しい発想は生まれません。材料が必要です。ゼロからは生まれません。幅広い知識を持っているが必要になります。ただし借り物の知識でも良いです。アドバイスをもらえる様々な知識を持つ人と幅広い交友関係を持つことも必要です。これらについては前にも触れた通りです。

 

課題解決、新しい発想の助けになる手法にブレインストーミング、TRIZ法があります。

 

ブレインストーミング

会議で使用される「集団発想法」であり、複数人でアイデアを自由に出し合い新たな発想を生むことを目的としています。

 

ブレインストーミングの4原則

判断・結論を出さない(批判厳禁)

粗野な考えを歓迎する(自由奔放)

量を重視する(質より量)

アイディアを結合し発展させる(結合改善)

ブレインストーミング - Wikipedia

はじめから答えを出すことは考えず、ひたすら知恵を出し合うと思いがけないアイディアが生まれます。出るだけ分野の違うメンバーが集まり、人数も最大10名を超えない方が気軽に意見が出ます。

多数テキストが出版されているので、是非手に取ってください。

 

TRIZ

TRIZは、旧ソ連海軍の特許審査官だったゲンリッヒ・アルトシュラーさんが、
250万件もの特許情報を調査し、発明における問題解決を体系化・構造化した問題解決理論・全体最適化理論です。(https://www.spinno.com/blog/archives/5377)

矛盾問題を解決するための発想手法、物理的矛盾を解消するための思考のヒントを与えてくれます。答えはくれません。

例えば、

「仕事もしたいし、遊びたい」 → TRIZからのヒント「時間による分離はどうか」→ 思いついた解決法「午前を仕事、午後は遊び」

例ですので「なんだ ! 」と思われるかもしれませんが、壁にぶつかったとき是非試してみてください。残念ながら私自身はTRIZを用いた経験はありません。

詳しく知りたい方は 「日本TRIZ協会」

日本TRIZ協会ホームページ (triz-japan.org)( http://www.triz-japan.org/)

があります。

 

まとめ

発想とは2つ以上の知識の組み合わせとひらめきにより新たな価値を生むこと

課題を明確にすること。真のニーズをしること。

使命感を持っていること。常に思案していること。

広い知識を持っていること、広く相談相手を持っていること。

たまに息抜きをすること。

ブレインストーミング、TRIZ等の手法を試すのも良い。

 

次回をお楽しみに

 

一休み オナガ

 今回は都心の公園でも良く見られるオナガです。ホームグラウンドの洗足池公園で撮りました。優雅な品を感じさせますので、私の「推し」の鳥です。玉に瑕なのは鳴き声が濁声で美しくないことです。

木彫りのバターナイフもシンプルで気に入っています。

 

社団法人光融合技術協会の技術紹介 その6  

 光学薄膜成膜法の基礎 その2

                 一般社団法人光融合技術協会は https://www.i-opt.org/

 下記資料は、一般社団法人光融合技術協会の生水理事の講演スライドの前回の続きです。もし、質問等ありましたら上記URLを開いていただいて、ホームページの中の問い合わせにご連絡いただけないでしょうか。

以上


 

 

優秀な技術者になる・優秀な技術者を育てる  その5 全体最適意識 (チームワーク力を高める)

優秀な技術者になる・優秀な技術者を育てる 

その5 全体最適意識 (チームワーク力を高める)

 

シンギュラリティは2045年に起こる?

 シンギュラリティをご存じでしょうか。コンピュータが人間の知性を超えることです。それが2045年に起こるとアメリカのレイ・カーツワイルが提唱しました。2045年以降どのような世の中が来るのかは本題からはずれるのでここでは触れません。レイ・カーツワイルが提唱した大切なことは技術革新が相互に影響し合って、加速度的に進んでいくと説明したことです。(Wikipediahttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%80%E8%A1%93%E7%9A%84%E7%89%B9%E7%95%B0%E7%82%B9

 技術革新が加速度的に進んでいますので、気を抜くと茹でカエル状態になります。技術が組み合わされて新しい技術が生まれていきますので、個人の技術だけに頼ることはできません。個人も会社も自前主義からの脱却が必要です。

 

ポケベルからスマホ、日本は取り残された。

 携帯電話を振り返って見ますと、ショルダーバックのような物を除外すると、一般人的感覚では最初はポケベルでした。若い人はもう知らないのではと思います。

「だれだれさんから電話がかかってきました」と「数字メッセージ」だけをポケベルの持ち主に伝えました。それから約40年、PHS、ガラ携、と移り、今はすべてスマホです。下図のように様々な機能を持ち、スマフォなしの生活が考えられなくなってきました。

 スマホへの進化は半導体、ソフト、通信、カメラ、モニター、画像処理、電池等の技術の組み合わせです。日本はガラ携にこだわり、取り残され、スマホには入り込めませんでした。

 これから、別の分野でも十分起こる可能性があります。

製品開発は帆船時代の航海に例えられる

 新しい技術の組み合わせで新製品を開発することは大航海時代の新天地を目指した航海に似ています。航海の計画を立てて、多額の資金を国王や富豪からの投資で未知の海に乗り出します。計画通り航海できることは皆無です。早くたどり着かねば、他の国に先を越されます。ただし、様々な未知の困難に遭遇し、それを乗り越えていかねばなりません。嵐、座礁、海賊、食糧難、反乱様々です。乗り越えるためには様々な専門を持った屈強な船乗りと、それらを束ねる強いリーダーシップを持つ船長が必要でした。

 現在の不確実性の時代の中で、複雑な技術を組み合わせて、新たな価値を生む新製品開発を計画に沿って優秀な指導者のリーダーシップの下に、優秀なメンバーが一丸となって開発を進めることができれば理想的です。

 しかし、現実には指導者も技術者も並みの能力を前提とした方が良いです。その中でどのように乗り切るかを考えることになります。チーム力がカギとなります。「優秀な技術者になる、育てる」は本稿の主題でありますが、ここでは「全体最適を目指したチーム力」について考えてみます。「一頭の羊に率いられた羊の群れは、どうすべきか。」です。

 

ネアンデルタール人は滅び、ホモサピエンスはなぜ繁栄したか

 数万年前、ヨーロッパではネアンデルタール人ホモサピエンスは同時に生存していました。ネアンデルタール人ホモサピエンスより体格も良く、頭も大きかったと言われています。しかし、現代はモサピエンスのみ生き残って繁栄しています。

なぜでしょう。ネアンデルタール人の石器等の道具の進化スピードはお遅く、ホモサピエンスの道具の進化は早かったようです。ホモサピエンス全体最適の下に協力し、知恵を出し合って、生活を改善していきました。ネアンデルタール人は高々数名の家族単位で生活していましたが、ホモサピエンス100人規模の集団行動を全体最適のために行動できました。ホモサピエンスは本能として全体最適の下に、共通価値を認識し絆を深める能力を持っていたようです。これにより気候変動等の苦難を乗り越えられたようです。まだ、仮説のようですがかなり確かな説と思います。

我々の祖先は価値を共有し「3人寄れば文殊の知恵」で生き延びてきました。

 複雑化し、変化のスピードが加速度的になっている現在、我々ホモサピエンスこの遺伝子を生かさなければならないと思います。

 

チーム力 全体最適

 複雑な技術開発を進めるには、優秀な指導者の下に、優秀な技術者が集まり、全体最適を意識して強固なチーム力を発するしくみを作り上げることである、と昔から言われてきました。現実は優秀な方は稀ですが、全体最適を意識して強固なチーム力を発するしくみは作らなければなりません。目標と開発仕様の明確化、頻繁な打ち合わせ等、基本的なことは教科書に載っています。ただ、教科書に載っているチーム力強化策は、何か「」が欠けているようにも感じます。

 このシリーズの冒頭でお話しました「技術者の目指す4つの満足」との整合が一つの課題となります。

  1).お客様の満足    (私、これがほしかったのよ。) 

  2).自分の満足       (技術者になって良かった。)

  3).家族の満足       (お父さん頑張っているね。)

  4).会社の満足       (あいつは良くやった。)

 特に最初の3つの満足です。全体と個々の整合です。仏教では、「自利利他」との言葉もありますが凡人ではなかなかその境地になれません。ヒントは「愛情」だと思っています。親が子供に抱く愛情、恋人に抱く愛情、これらはスキンシップ、アイコンタクトでオキシトシンホルモンの分泌で強くなると聞いています。

 

チームや、そのメンバーに同様な愛情を持っていれば、チームの成功の喜びをチーム全体で分かち合え個々の満足との整合が取れるのではとお思います。

ホモサピエンスの本能の「仲間意識、絆、連携、共感」を強められると思います。

 

何をしたら良いか どうするか

 今まで、思い付きを寄り道をしながら述べてきましたが、結局、古くから言われてきたことを、下記のことをもう一度振り返り実行することと思います。

アイコンタクト → face to faceの会議、懇親会、パーティ、家族ぐるみのレジャー

スキンシップ  → 握手、腕組等、ハグ ! 、ハイタッチ !

 私の時代は、会社の飲み会、運動会開催、レジャー等、社内で盛んにおこなわれてきました。今はコロナ禍もあって、社内の飲み会も激減しました。若い方々は上司と飲むのは「ウザイ」と言って避けます。

2次会費用を数万円を懐からポンと幹事に渡し、後は皆で楽しめよと言える上司を持ちたいですね。

 欧米では、初対面でもバグや握手をします。また、職場ではピクニックと簡単な野外パーティを頻繁に開きます。それで、仲間意識も強くなります。

 日本の停滞は「自前主義」がもたらしたと思っています。欧米は「オープンイノベーション」推し進めています。異文化との合流です。外の知恵も借りて三人寄れば文殊の知恵で難局の連続を乗り越えていかなければなりません。

 

 もう一度、昔に帰って、face to face、スキンシップの機会を増やすのが、これからの加速度的に複雑になる社会に非常に重要と思います。ただし、これからは、異文化の方々との絆も重要です。

 

つづく

 

一休み カッコウホトトギス

東京葛飾区にある水元公園で10月に撮りましたカッコウホトトギスです。

歌等で名前を聞くポピュラーな鳥ですね。しかし、都会で見たことはありますか。

もっと、面白いことは、カッコウホトトギスの外見の区別がつきますか。実はわたくしにも無理です。

写真に名前をつけましたが、実は?です。もう一つ、全く似た鳥にツツドリがあります。

3つまとめて「トケン類」といいます。鳴き声は全く異なります。

 

一般社団法人光融合技術協会の技術紹介 その5  

 光学薄膜成膜法の基礎 その1

                 一般社団法人光融合技術協会は https://www.i-opt.org/

 

 下記資料は、一般社団法人光融合技術協会の生水理事の講演スライドです。もし、質問等ありましたら上記URLを開いていただいて、ホームページの中の問い合わせにご連絡いただけないでしょうか。

次回につづく





 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優秀な技術者になる・優秀な技術者を育てる  その4 豊富な知識獲得への努力

情報 知識 知恵

 人間は口から様々な食べ物を食べ、口で咀嚼してのみ込みます。胃で消化して、腸で体に必要な栄養素を吸収します。そして肝臓に蓄えられて、必要な時に各器官に送られて、各栄養素が活動源になったり、組織に組み立てられていきます。

 技術者にとって「情報」は食べ物、栄養素が「知識」、栄養素が肝臓や組織の中でブドウ糖等のすぐに活動に役立つように組み替えられたものが「知恵」のようにたとえられます。

技術者は常に情報を手に入れて、知恵の形まで高めておかなければ、技術活動はできません。情報のままでは単に知っているだけとなります。「知恵」とは会得しすぐに使えるようになったものと言えます。

知恵に満たされている技術者が優秀な技術者の条件の1つと言えます。そのために、常に新しい情報に接しなければなりません。情報に関しては、どん欲に集め、それを咀嚼して消化し、いつでも役に立てる知恵の形にして、沢山貯えておかなければなりません。

情報収集

技術者の業務時間の10~20%は情報集めに使うべきと考えています。今はほとんどの情報がインターネットから得られるようになったので大変やりやすくなったと思います。 最近は学会もオンラインで聴講できます。文献、特許も検索できます。有識者にオンラインで教えを乞うこともできます。

インターネットから検索できる技術情報の代表はJST(国立研究開発法人科学技術振興機構) で文献特許等様々な検索ができます。例として

 https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja

 https://jglobal.jst.go.jp/      

スタンフォード大学やMITの講義も受けられます。

https://business.ntt-east.co.jp/bizdrive/column/dr00091-003.html

https://boxil.jp/mag/a3399/

情報収集のサイトを紹介するページもあります。

https://miraie-group.jp/sees/article/detail/engineer_information_site

 

しかし、競争相手も同様にできることを忘れてはなりません。

 

ベースとして必要な知識

英語、コンピュータハード&ソフト知識、大学時代の事業内容(教科書、ノート)

 英語は情報集めに非常に大切なことは、耳にタコができるほど聞いていると思います。私の反省から独学は難しいです。会話は素直に教室に通うべきです。モチベーション維持のためにも教室に通うことをおすすめします。

 日常英語もさることながら、非常に大切なのは英語の技術文書が抵抗感なく読めることです。特にTechnical termを覚えるほどスムーズに技術文書が読めるようになります。技術論もできるようになります。

大学時代に使った教科書は捨てないことです。学んだことを振り返るとき、使った教科書がベストです。

 

技術情報源

(1)学会、学術雑誌

 学会、学術雑誌は技術情報の中で最も大切な源です。自分の専門の学会への参加、学術雑誌の購読は最も重要です。ただし、注意点はあります。大学からの発表、論文は非常に勉強になりますが、チャンピオンデータで、完全なる検証ができていない可能性があります。企業からの発表は企業秘密を避けています。それを認識した上で、こちらもgive and takeで発表もしなければなりません。発表することにより、同じ専門の人との和ができて、様々な情報が入ります。発表の本音も聞けます。

 加えて、学会に参加した時、招待講演はできるだけ聴講することを進めます。招待講演は幅広く技術の動向を感じ取れます。講演者と交流を持つことも進めます。質問すれば講演者との交流のきっかけもつかめます。

 

(2)特許

  特許は玉石混合で皆様も苦労しておられるのではと思います。学術論文と異なり、実証されていなくても、論理的に間違いがなく、新規性があれば特許になります。競合他社にとって本命特許は偽装してすぐには検索されないようにしているかもしれません。

大学等の公共研究機関の特許も気に掛けることをお勧めします。今話題のフレキシブル太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」は日本で発明されましたが、発明者の桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授は特許申請料が高くて取得していないとのことです。特許維持費も少なく、企業から声を掛けられない場合はすぐに放棄される場合も多いです。

 

(3)専門書、専門誌、業界雑誌、新聞、

 日経産業新聞日刊工業新聞等の新聞は必ず自分で購読してでも目を通したら良いですね。世の中の動向が分かります。今はデジタル版もありますが、一目で見渡すには紙媒体の方が優れています。私の分野の関係では電子デバイス産業新聞、電波新聞等もあります。

 

(4)展示会、講演会 (5)社内報告書、データベース

 積極的に利用されていると思いますが、講演会の後の懇親会は参加した方が良いです。懇親会は役職者の集まりのように感じますが、若手技術者も奮って人脈を作るチャンスです。

 

(6)恩師、先輩、知人、専門家、

 徒然草に「先達はあらまほしき事なり」。これらの方々とのパイプが最も大切なのは十分理解されていると思います。非常に価値ある情報をいただけます。

 よく「失敗の勧め」を耳にしますが、無知による失敗は絶対してはなりません。諸先輩方との雑談の中で先輩方の失敗談も聞かれます。

 できれば海外の方との懇談も広めたいです。

 

( 7 ) お客様

 お客様は技術者にとっても重要な情報源です。将来ニーズ、自社製品の不具合、競合他社の情報等です。技術者がお客様と接する機会を増やすことは、技術者個人では難しいので、企業側の課題と思います。

 

何をしたら良いか どうするか

 今まで述べてきましたが、ほとんどは今更と思われると思います。しかし、本当に実行しているかとなると、確信できないのではないでしょうか。どのように努力したら良いでしょうか。

 

時間を確保できているか、時間をつくる

毎日の納期に追われている開発業務の中で、技術情報収集のための時間を取ることはかなり難しいのではないかと思います。前述のような「技術者の業務時間の10~20%は情報集めに使うべき」をどのように実行できるかです。しかし、時間は見つけるものではなく作るものと言われています。

 

                                             時間を作った者が勝ち

 

  最も良いのは、スケジュールに組み込むことです。就業時間中に机に向かって文献を読んでいることを常態化するのも勇気がいるのではと思います。自宅の書斎で文献を読んでも、なかなか集中できません。私は幸運なことに、電車で座って通勤でき、一番集中できました。会社の図書室も良いと思います。学生はよくカフェで勉強しています。

 すべてにおいて、「情報を制する者が勝つ」(孫子の兵法)と言われます。技術者の場合、情報に接する時間を作った方が勝ちとなります。

 

集めた情報を知識にする、発表会の提案

 情報を集めただけでは役に立ちません。知識、知恵までに高めなければなりません。一つの提案ですが、グループ内で定期的な集めた情報の発表会を開くのはいかがでしょうか。仕事の進捗、成果の発表会は日常的に行われています。しかし、得た情報の発表会は企業ではあまり耳にしません。

発表するには集めた情報を良く理解し、咀嚼し、整理されていなければなりません。得た情報を知識までに高めることができます。情報集めのノルマの働きもします。情報の共有化になります。

ただし、知恵にするまでには知識を使った経験が必要となります。経験を積むしか妙手は無いと思います。

情報の整理整頓、データベース

 集めた情報をそのままにしておくと、散逸し、忘れ去られてしまいます。データベース化をお勧めします。グループで統一規格化し、サーバーに保管すると情報の共有化にもなります。

 下図は例です。エクセルは様々な機能があるので便利です。

 

情報収集の範囲、逆三角形型人材

 よくT字型人材になれと言われます。専門分野は奥深く、また幅広い知識を持てとのことです。しかし、今はチームワークで技術開発を行う時代です。「隣は何する人ぞ」とチームメンバーの内容を理解しなければなりません。上辺だけ幅広いT字型では連携プレイは上辺だけになります。 私はあえて逆三角型人材になれを言います。自分の専門技術の周辺も、それなりに深く知る必要があります。それにより、他のメンバーの仕事内容を理解できるようになります。下左図の共有知識の面積を広げることです。

お互いを理解できると堅固なチームワークを作れます。

「秋深き 隣は何を する人ぞ」(芭蕉)

お隣が何をしているか理解するにはある程度お隣の専門知識を知る必要があります。

 

 

時間をつくる

集めた情報の発表会

集めた情報のデータベース化

逆三角形型人材

 

一休み オオタカ

  今回は今までに都内公園で撮影しましたオオタカの写真を載せます。タカの仲間は多数いますがオオタカは一番名の知られた代表的なタカではないかと思います。精悍さを感じさせます。  

 

 

一般社団法人光融合技術協会の技術紹介 その4  

 光学薄膜(反射防止膜)の設計手法 後編

                 一般社団法人光融合技術協会は https://www.i-opt.org/

2.広帯域反射防止膜

 一般的な広帯域反射防止膜は可視光域(λ=400~700nm)を反射防止する目的で開発されてきた。反射防止膜の層数を増やすことで、振幅条件、位相条件に合致する解を多くする事で広帯域化を可能としている。可視光域の広帯域反射防止膜の基本形は次の3層構成である。図3に反射率特性を示す。

光学膜厚:1M,1L(λ/4)  2H(λ/2)    設計波長:λ

現在、実用化されている広帯域反射防止膜は、この3層構成を基本として等価膜などにアレンジしたものがほとんどである。この基本3層構成を基にした等価膜の考え方を図4、図5に示す。中間屈折率層及び高屈折率層をL(低屈折率層)/H(高屈折率層)/L(低屈折率層) の3層構成、またはH/L/Hの3層構成に置き換えることで、近似的に最適な中間屈折率層に等価変換する。屈折率の最適化はL,Hの膜厚比を任意に変えることで、最適な解を求めることになる。

3. 4層λ/4構成広帯域反射防止膜と等価膜広帯域反射防止膜

膜厚がλ/4構成の反射防止膜でも層数を増やすことで、基本3層反射防止膜に比べて、反射率を低減させることは可能である。基本3層構成に1層増やした4層構成反射防止膜の設計例を図6に示す。同様に基本3層構成反射防止膜を5層等価膜仕様にした設計例を図7に示す。等価膜構成の膜設計を行う上で重要な点は、蒸着条件の多少のバラツキがあっても屈折率変化の少ない材料を選択することである。等価膜

 

構成の膜設計を行う上で重要な点は、蒸着条件の多少のバラツキがあっても屈折率変化の少ない材料を選択することである。等価膜仕様では、λ/4より非常に薄い膜厚で構成されるために、膜厚制御の原理上、膜厚精度が蒸着材料の屈折率変化に左右されるためである。

 

 

今回はここまで、次回をお楽しみに



 

優秀な技術者になる・優秀な技術者を育てる その3 日本の技術力の現状

成長市場での日本のシェア低下

 9月5日の日経に以下の記事が載りました。基本的に日本の技術力が低下しています。前述のようなモチベーションが低いことだけが成長市場での日本のシェア低下している原因ではありません。根はもっと深いようです。

最近のニュースで注目論文数で日本は世界13位に後退」とありました。

 

イラン、スペインにも負けています。論文数では世界5位と言い訳がましく報道されていますが、もっと深刻なのは、人口当たりの論文数は世界37位 (2016年   https://blog.goo.ne.jp/toyodang/e/bee524311262ac48a89134496e055bfe)

であります。注目すべき論文数は13位、日本は人口当たりの論文数は世界の37位、これより人口当たりの注目すべき論文数はさらに下位となります。技術立国としてとても世界と戦えない状況です。

 ここで、企業側を覗いてみます。2020年3月31日現在の我が国の研究者(企業、非営利団体・公的機関及び大学等の研究者の合計)は、88万954人です。そのうち約6割の50万7,473人が企業の研究者です。(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd241520.html)

(ただし、企業における研究職と技術職をどのように区別しているのかは不明です。)

上のグラフは日本の部門別論文数割合の遷移を示しています。平成26年において企業の研究者からの論文は全体論文数の僅か6%です。年々低下しているので、現在はさらに低いと思います。

 

次に特許を見てみます。 

https://www.globalnote.jp/post-5380.html

上図は企業側の国際特許出願件数のグラフです。日本は3位につけています。

日本は注目論文数で世界13位に後退していますが、海外特許出願数は世界3位です。論文数が悪いのに、特許出願数は多く出願されています。このアンバランスは日本の技術力にどのように影響されるか気になります。

 

チャットGPTに聞いてみました

 そこで、今話題の「チャットGPT」に聞いてみました。答えは下の通りです。

「日本の技術力は衰退しないと考えられます。論文数が悪いということは、研究開発において日本が世界のトップを走っていないことを意味しますが、しかし、日本の技術力には著しい改善が見られました。日本は、量子コンピューターの研究開発など、世界の最先端技術開発で注目されていま日本の技術力は、今後も着実に改善されていくと考えられます。特許出願数が多いことから、日本は技術的な革新を行っていることがわかります。」

 

最先端AI技術力

実にチャットGPTからは楽観的な回答が帰ってきました。これも茹でカエル状態かもと思い、最も今後市場が伸びる、技術力が必要と思われるAI技術について調べました。下図をご参照ください。

グローバルAIタレントレポート2019 (https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/04/035821df76711386.html)

によれば、AI研究者数(2018年に主要なAI会議で英語論文を発表した研究者数)でみると、1位は米国(10,295人)、2位中国(2,525人)、3位イギリス(1,475人)、4位ドイツ(935人)、5位カナダ(815人)、6位日本(805人)とか見なり劣りのする状況になっています。 また、AI関連特許出願(技術分類G06Nが付与されている特許出願)の件数は主要5か国で最も遅れを取っている状況です。

今後の日本の競争力

技術で稼いでいる日本は、技術力の低下がGDPに影響します。国民一人当たりの名目GDPでみてみると、諸外国との差は顕著となり、日本は、20年前に世界第2位だったのに対し、次第に順位を下げ、最近では20位以下まで順位を下げています。

https://chizai-partners.net/ip-strategy/personal-opinion-of-japans-international-competitiveness_2/

 このように、既存技術だけを見ると、しばらくは持ちこたえられそうですが、AI等、巨大な市場が見込まれていて、研究と技術が連携して進まなければならない最先端分野では、日本の競争力は徐々に後退しているものと感じられます。

 

まとめ

  1. 成長市場での日本のシェア低下している
  2. 注目論文数で日本は世界13位に後退
  3. 日本は人口当たりの論文数は世界の37位
  4. 平成26年において企業の研究者からの論文は全体論文数の僅か6%、年々低下している
  5. ただし、国際特許出願件数において、日本は3位につけている。
  6. チャットGPTの答えは「日本の技術力は、今後も着実に改善されていくと考えられます。」
  7. 国民一人当たりの名目GDPでみてみると、諸外国との差は顕著となり、日本は、20年前に世界第2位だったのに対し、次第に順位を下げ、最近では20位以下まで順位を下げている。

私の意見

研究開発は技術を牽引します。論文数が減っていることは、ジワリと先端の技術力を低下させていきます。企業技術者も研究開発を支え発信していかなければなりません。

考えていきましょう。

 

 

一休み  大田区洗足池公園のエナガ

 私の鳥撮りのホームグラウンドは大田区洗足池公園です。この公園には人気の高い北海道のシマエナガにも負けない可愛いエナガがいます。雛達が一列に並ぶ「エナガ団子」にも会えます。

 

一般社団法人光融合技術協会の技術紹介 その3

 光学薄膜(反射防止膜)の設計手法 前編

はじめに

 薄膜の干渉を利用した光学薄膜で最も利用されている膜種は反射防止膜である。歴史的に見て反射防止膜は、反射防止による透過光の増加を目的として開発されてきた。第2次世界大戦では潜水艦の潜望鏡の透過率を向上させるために、真空蒸着によるMgF2単層コートが実用化された。その後カメラレンズの反射防止膜として多層膜反射防止膜が実用化され、その基本技術はその他の光学機器にも利用されている。

1.単層反射防止膜

薄膜の干渉を利用した反射防止膜の基本的な考え方は次の通りである。便宜上入射媒質は空気(n=1.0)、各媒質(薄膜、基板)の屈折率の波長分散は考慮せず、入射光は垂直入射(0°入射)とする。ガラス基板の上に1層薄膜を成膜した場合、入射した光は、一部は薄膜表面で反射(反射光1)され、透過した光は薄膜とガラスの境界面で一部の光が反射(反射光2)される。薄膜とガラス界面で反射した光と薄膜表面で反射した光が干渉し、光の振幅条件と位相条件を満たす場合反射率を0にすることが可能となる。図1より振幅条件は反射光1と反射光2の振幅が等しく、位相条件は反射光1と反射光2の位相差がλ/2になることを意味する。この場合注意したい点は屈折率が低い層から高い層で反射される場合(薄膜の屈折率は基板より低い必要がある)は同じ反射位相を取るが、逆の場合は反射位相が180°変化する。つまり基板より屈折率が高い単層膜では上記条件では反射増加膜になる。よって単層反射防止膜を実現するには薄膜の屈折率が基板より低い必要がある。

反射防止が成立する条件は以下の通りである。

①振幅条件 

    :フレネルの反射式から求められる

②位相条件 

     :位相差は薄膜内の光が往復することにより 2*λ/4=λ/2

基板の屈折率:ng  薄膜の屈折率:n  薄膜の膜厚:d

 

 上記条件式より単波長で反射防止を行うには、薄膜の屈折率が基板の屈折率の平方根であることが要求される。位相条件を満たすことは薄膜成膜時に制御可能であるが、振幅条件を満たす光学薄膜材料は限られており、実際にはこの条件に近い屈折率を有する材料を使っている。1例として標準的なガラス基板である白板の場合、屈折率は1.52であるので、この振幅条件を満たす薄膜材料には屈折率1.22のものが必要とされる。現実このような屈折率を有する薄膜材料は無く、一番屈折率の低いMgF2n =1.38)が使われている。この場合振幅条件を満たさないために、位相条件を満たす波長(λ=4nd)で最小反射率を有する。しかしMgF2でも屈折率が1.9の高屈折率光学ガラスの場合、振幅条件を満たし反射率をほぼ0にすることが可能である。図2参照

 

つづく 次回は広帯域反射防止膜について

 

優秀な技術者になる・優秀な技術者を育てる その2 モチベーション 後編

2.3 モチベーションはどこから生まれるのか

 私が疑問に思っているのは「モチベーション向上願望」は本能からきているのか?です。前編でお話しました様にほとんどの人はモチベーションをもって働きたいと思っています。しかし、反面、楽したい、さぼりたいとの誘惑があります。どちらか言うと、こちらの「楽したい」との願望の方が強いように思います。

 「モチベーションの脳内機構と制御」 南本敬史 https://www.jst.go.jp/pr/jst-news/backnumber/2010/201103/pdf/2011_03_p14.pdf

の記事を見つけました。猿は水を沢山もらえるように学習し、努力するという、モチベーションの高さを測定しました。

 しかし、目の前の報酬に対する努力に関するものと感じました。猿が次のボスの座を狙って毎日筋トレする話は聞いていません。人間はします。人間だけです。私の単なる直感ですが、人間にとって楽したい、サボリたいが本能で、モチベーションを上げて頑張るのは長い歴史と社会性から生まれたもののように感じます。 安泰に暮らしたいため、いろいろな努力をしていることになります。

 人間本来の欲求に関しての有名な説に「マズローの欲求5段階説」があります。最も低い段階から順に、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求があります。

      

3段階目の社会的欲求までは人間らしく暮らしたいとの欲求になります。望ましいのは承認欲求を満たすためのモチベーションで、仕事内容のレベルアップに直接結びつきます。オス猿のボスになりたいとの欲求も似ている気がします。しかし、そのために猿は毎日筋トレをしません。なぜ人間はひたすらモチベーションを持って毎日筋トレできるのか。遺伝子に組み込まれているのか、永い歴史の中で生まれた規範なのか、この辺りが明確になれば、モチベーションの高め方も別の見方が出てくるのではと思っています。

 5段階の自己実現欲求までは、普通の人にはなかなか到達できない欲求ではないかと思います。頭に浮かびますのは有名な葛飾北斎です。死ぬ間際に「あと10年あるいは5年生きられたらもっと上手な絵描きになれたのに」と言ったそうです。これこそ最高のモチベーションに思います。

 しかし、ほっとけば、サボリたくなる現実の凡人の集団がいかに高いモチベーションを長い時間維持できるようになるかが、一番の課題となります。本能に訴えられるのならベストです。

 

2.4 まとめ: 最も大切と思う3つの施策

 モチベーションを高く維持する方法は、様々な方法が提案されてきました。しかし、前述で考察してきました様に、個々の技術者がマズローのどの段階の欲求を満たしたいのか、また個々人の性格の違いによっても異なるように感じます。そのあたりまで深く考えての方法論があるのかはまだ知りません。

このような中で、あえて私が今までの経験で、役に立つと思われる3つのポイントを挙げてみました。覚えやすいようにキャッチコピー化したキーワードにしてみました。

①  三日坊主でもOK

②  明日があるさ

③  鍋の中の蛙、大海を見よう

①三日坊主でもOK

昔から何をやっても長続きしない人を三日坊主と呼びます。普通の人でも人間の弱さから、高いモチベーションを長期間維持できない悩みを持つケースが一番多いのではと思っています。学生時代に早くから期末試験勉強を始めても、挫けて、勉強に集中できませんでした。試験3日前になると焦りだし、一心不乱に勉強しました。集中しているときと、そうでないときと、能率は3倍程度違っていたと思います。仕事の能率でも、モチベーションが高い時と低い時では能率に大きな差があります。いかにモチベーションを高く維持できるかです。三日坊主からのいかに脱却するかとなります。

 モチベーションを3日しか高く維持できないのなら、3日毎に目標を更新していけば良いことになります。3日は少し短すぎるかもしれませんので、せめて1週間毎に目標を更新することをお勧めします。

最終目標を系統立てて、分解して、1週間ごとの目標に落とし込みます。

 大切なのは、その目標を机の前等の毎日見えるところに貼ることです。目標は最終目標と1週間の目標と両方書きます。仲間にも見られるところに貼るのも良いと思います。1週間ごとに張り替えます。

三日坊主対策に「マインドマップ」と言う方法があります。いろいろな指南書があります。

インターネットにも以下の解説ページがあります。他にも多数あります

 

明日があるさ

いくらモチベーションを高く維持できても、いつかは折れます。気晴らしが大切です。1週間に1度は、仕事を忘れ、趣味に没頭する、家族と過ごす、仲間と飲む等の気晴らしが必要です。納期が迫っている技術者は追い詰められて土日返上となります。耐えられるのは数週間だけです。週に1度でも生き抜きするのと、しないで追い詰められたまま仕事を続けるのと、どちらが早く完成するか、実験するのも良いと思います。

 私の好きな一昔前の歌に「明日があるさ」があります。一部の歌詞を下に示します。

明日があるさ

若い僕には夢がある

いつかはきっと いつかはきっと

わかってくれるだろ

明日がある 明日がある 明日があるさ

作詞: 青島幸男

定期的にリフレッシュしていれば、気持ちは強くなり、上司に多少怒られても、なにくそと思い「明日があるさ」の気分になれると思います。挫けたときは是非口ずさんでください。カラオケで大声で歌う方が良いです。

 

③鍋の中の蛙 大海を見よう

 井の中の蛙は大海を知らなくても、井戸の中で一生安泰に過ごせるかもしれません。しかし、鍋の中の蛙は外の様子を知って、すぐに鍋から出ないとゆであがります。前述のように日本の技術者がもし「ゆでガエル」状態ですと大変です。まず、外を知らなければなりません。

 私は40年前の1983年に1年半、会社から派遣されてアメリカのアリゾナ大学に留学しました。発表スライドづくり、簡単な実験器具づくり等、すべてスタッフが居て自由に頼めました。研究効率を上げるための仕組みが様々に工夫されていました。単にお金の余裕の問題でなく、価値観の違いと思いました。大げさに言えばカルチャーショックでした。

 日本では、技術者は業務に没頭していると、本人、上司とも安心を感じているように思われます。しかし単に没頭していると外を見る余裕がなくなります。

とにかく、外を見る努力が必要と思います。そして、外から中を見るようにします。海外に行く、単なる訪問よりできれば滞在するのがベストです。海外に友人を作るのも良いです。

 日常においても技術者は営業についてお客様を訪問する、あるいはサービスマンについて修理の現場を回るのももっと良いと思います。学会活動、他社との共同開発等もあります。

 外から、自分の仕事を垣間見えると新たな活力、モチベーションが生まれると思います。もちろん、そとを見ることはモチベーション向上以外にも様々な効用があることはご存じと思います。

次回は情報 知識 知恵についてです。お楽しみに

 

一休み 渡良瀬遊水地の野鳥たち その2

 

一般社団法人光融合技術協会の独自研究のご紹介 その2

  プラスチック基板へのSiO2成膜を数倍高速化する技術を宇大と共同開発

 

前回、ご紹介しました様に、フレキシブル太陽電池やフレキシブル表示・照明パネルの耐久性が大きな課題となっています。そのためには、デバイス内への水分の侵入を防止するいわゆるガスバリア膜が必須です。

我々は宇都宮大学(依田准教授)と光融合技術協会(大谷)の共同研究として、“HC-PECVD (ホローカソード プラズマ活性化 化学的気相蒸着法)によるハイバリア膜の高速成膜条件の検討”を進めています。

 

  1. 研究内容

SiO2薄膜は、光学薄膜のほか、酸素や水蒸気のバリア膜として用いられますが、その膜密度を向上させるとバリア性が向上するとの報告がなされています。成膜条件を変化させて実験した結果、バリア性能は未確認ですが、成膜時圧力1.5Pa以下で高密度、高硬度SiO2薄膜を成膜できることがわかりましたので紹介いたします。

 

2. 実験装置

実験に用いたHC-PECVD装置の概略を図1に示します。SiO2成膜のための前駆体としてTMDSO、プラズマ源としてAGC-PTS(Plasma Technology Solutions) 製のホロカソード(HC)を用いました。高流量の酸素が導入される2対の空洞状陰極に交流電力を印加することで生成される高密度の酸素プラズマが小さなノズル列から基板側に放出され、そのプラズマ中に2対の電極の間から導入される前駆体の分解反応によって安定な高速成膜を可能にしています。

 

  1. 実験結果

HC-PECVDの成膜変数(TMDSO流量、酸素流量、ガス圧、印加電力)と膜密度の関係を検討しました。特には、膜密度を上げるためには成膜時のガス圧が重要と考え、排気バルブ開閉度(全開or半開)を変えてガス圧0.5~3.0Paになるよう成膜したときの、酸素流量とガス圧の関係を調べました。その結果、

ガス圧0.5~1.5Paにて成膜することで、スパッタ膜と同等の高密度・高硬度・炭素量2%以下の低応力SiO2膜を、50μm厚のPET基板上に成膜できることを実証しました。光学用途にはたいへん有望な技術であると言えるかと思います。ただ、これまで得られた膜のバリア性を評価していますが、何故か、まだ期待されるバリア性を示す膜は得られていません。現在、その理由を調べているところです。

Fig.1 Schematic diagram of HC-PECVD system and hollow cathode

 

4.今後の予定

 引き続き、バリア性が得られない原因の究明と対策の検討を続けますが、光学用途への展開も並行し

て進めたいと考えています。


一般社団法人光融合技術協会は下記をご参照ください。

https://www.i-opt.org/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優秀な技術者になる・優秀な技術者を育てる その1 モチベーション

優秀な技術者になる・優秀な技術者を育てる 

   その1 モチベーション前編

 

2モチベーション

2.1 衝撃的ニュース:我が国の仕事への熱意

下は日本経済新聞2023年6月15日の記事です。仕事に熱意を持っている人の割合が5%で調査した145か国の中で最低とのことです。これでは、日本はどんどん衰退していきます。ただし、「不満をまき散らす全く無気力な社員の割合減少している。」とあります。 

 では日本のワーカー自身は他国のワーカーに比べて働く熱意が劣っていると感じているのでしょうか。もし感じていないとすると、失礼ながら「ゆでガエル」を思い浮かべます。(カエルを水に入れ少しずつ水温を上げていくと変化に気づかず、最後にカエルは死んでしまう。)   

            

      https://www.irasutoya.com/2019/10/blog-post_936.html  より

 ただし、ゆでガエルも、自分の置かれた状況を察すれば、直ちに鍋から飛び出すものと思います。国内のすべてのワーカーも人に負けない熱意をもって働きたいと思っています。

 これからは「熱意」に替えて私が使い慣れている「モチベーション」を使います。

 

2.2 モチベーション向上方法レビュー

 モチベーションに関する指南本をアマゾン経由で検索すると60冊以上の本がピックアップされました。如何に皆がモチベーションに関心が高いかを示しています。

参考までに、同様に「人材育成」で検索しますと同様に60冊以上の本が見つかりました。インターネットのブログ等にも数え切れないほどの記事が載っています。 

 また、モチベーションに関する格言も古今東西非常に多数、言われてきました。
「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」上杉鷹山
「ハングリーであれ。愚か者であれ」スティーブ・ジョブズ(元アップル社のCEO)
また、育成側からは
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」山本五十六(元海軍の元帥)
この3つの格言でどのように行動すべきか大体、言い尽くされるのではと思っております。

 このように、モチベーションの上げ方については、昔から正に「至れり尽くせり」で指南されています。ここで、今まで様々に書かれてきた内容をおさらいして、私なりにまとめてみました。 

モチベーション向上のために

1.目標の立て方

 明確な目標や目的を設定する

 目標を細かく設定し、小さな成功を何度も得る

 目標をスケジュールに全て落とし込んでしまう

 進捗状態を見える化する

 目標を人に伝える

2.仕事への興味を持つ

 自分の強み弱みを理解する。

 仕事が楽しくなるような環境に意識的に変える努力をする。仕事仲間とのサークル等

 成果を可視化し、やっている事の意味を理解する。

モチベーションが上がらないとき

 目標が不明確、頑張っても評価されない環境にいる。

 不満や不安に思っている事を言い出せない。

 興味がないことをやっている

 自分にご褒美を用意する、思い切って休む、適度にリフレッシュする。

モチベーションを上げるための方法は十分そろっているように感じます。上述の新聞記事と矛盾する気がします。どこかで歯車がかみ合っていません。

  次回の後編では、もう少し掘り下げて考察してみます。

 

一休み

 今回の野鳥は渡良瀬遊水地で撮影したコウノトリです。4月27日と6月7日に行きました。野生に戻されたコウノトリが人工巣塔で毎年営巣し雛が育っています。4月27日から6月7日の約40日でほぼ親鳥と同じ大きさまで育っていることが分かります。コウノトリの飛ぶ姿は優雅ですね。隣を飛んでいるカラスに比べてかなり大きいです。オシドリ夫婦と言いますがオシドリは不倫するそうです。コウノトリの方が夫婦の絆ははるかに強いとききます。

一般社団法人光融合技術協会の独自研究のご紹介

 私共が進めています一般社団法人光融合技術協会の活動の一端をご紹介します。以下は私共の鈴木理事からの記事です。

現在、フレキシブル太陽電池(現在はCIGS、将来的にはペロブスカイト)やフレキシブル表示・照明パネルの耐久性(寿命)が大きな課題となっています。そのためには、デバイス内への水分の侵入を防止するいわゆるガスバリア膜が必須です。このガスバリア膜には様々なタイプがあります。それらは、膜の構成や材料、成膜プロセスの違いによって分類されます。今、最も必要なことは、水分透過率が10-4g/m2d以下で、かつ、低コストで作成できることです。それを実現するには、できるだけ高速でち密な酸化膜や窒化膜を形成できるプロセスが必要です。

そこで、我々は宇都宮大学(依田准教授)と光融合技術協会(大谷)の共同研究として、“ホローカソードPE(プラズマ活性化)CVD(化学的気相蒸着法)によるハイバリア膜の高速成膜条件の検討”を進めています。

このプラズマ源を用いた方法は酸素100%の高密度プラズマを安定に供給できるので高速でち密で低応力の膜を長時間安定的に形成できます。かつ、電極表面が汚れにくいために、フレークの発生が少なく、膜の欠陥を極めて少ないレベルに抑えることが可能なので、バリア膜形成に有利と考えています。具体的には、典型的な成膜方法であるスパッタ法に比べて数倍の速度でかつC含有量の少ない低応力のち密なSiO2膜が形成できることは確認済みです。そこで、T社などがこのプロセスに興味を持ってます。

図1に示すような2本の空洞電極に放電ガス(例えば酸素)を導入しながら数10kHzの交流電圧を印加することで、高密度のプラズマが得られるホローカソードプラズマ源を用いたPECVD法です。プラズマは電極下部に設けられた小さな穴のから成膜チャンバー内に放出され、その直下に設けられた穴からプリカーサー(出発原料)が導入されます。このため、プリカーサーの分解による電極内面の汚染が避けられるために長期間の安定な成膜が可能なことが特徴の一つです。さらにホローカソード放電により高密度のプラズマが得られますので、スパッタの数倍の成膜速度が得られ、かつ、例えば、TMDSOなどからSiO2膜を得る場合には、残留カーボンが2%以下に抑えられ、かつち密で応力が小さい膜が得られることも特徴です。この技術はすでに大面積反射防止ガラス製造ラインに用いられており、図2に示されるような3.4幅のプラズマ源が開発され、使用されています。

当協会では、この技術はハイバリア膜の高速成膜にも有効なはずと考え、検討を開始したのですが、どういうわけか、バリア性が得られませんでした。そこで、現在、共同研究として、その理由を見出し、高速成膜を実現することを目指して、検討を進めているというわけです。用いている装置は当協会が管理運営している図3のインライン成膜装置であり、AGC-PTS社製のラボサイズのホロカソードプラズマ源(図4)を1台、フラウンホーファーFEPの丸形パルススパッタ源と前処理用RFプラズマを搭載しています。

この後、順次、検討結果を紹介していく予定です。

次回に続く