優秀な技術者になる、優秀な技術者を育てる  その11 品質・ロバスト性向上 後編 統計手法

優秀な技術者になる、優秀な技術者を育てる

 その11 品質・ロバスト性向上 後編 統計手法

   前回、「品質とは出荷時の不良率の低さでは無く、ユーザから見た信頼性である。」と言いました。さらに言うと、品質が良いとは、保証期間の間、常識的使い方の中で、ユーザが期待する性能がだせることです。

 保証の期間と言っても何年なのか、使用環境によっても変わります。常識的使い方と言ってもスマフォはテーブルから落としても多分壊れないと思いますが、カメラを落とすと確実に壊れます。様々に使用状態が変わっても性能をいかに維持できるかをロバスト性と言います。開発においてはロバスト性向上を目指すことが品質向上を目指すことになります。

 製品の誕生から寿命まで、製品の性能や損傷に影響を与える様々な要因についてロバスト性を考えていかなければなりません。要因の例を下の表にまとめてみました。

 個々の製品ではさらに細かく要因をリストアップしなければなりません。それぞれの要因が製品の性能や損傷にどのように影響を与えるのか、複数の要因が絡み合って影響していないか(相互作用)非常に複雑です。まず、どの要因が性能に重要に作用するのか、整理しなければなりません。

https://www.ac-illust.com/main/search_result.php?word=%E6%95%B4%E7%90%86%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%AA%E3%81%84#google_vignette

 

 リストアップされた要因に漏れはないか、どの要因がロバスト性に大きく影響するのか感覚的にも技術的にも把握するのが、前回述べた三現主義に乗っ取った調査になります。

 

 リストアップされた要因を一つずつ実験して、製品への影響を調べるのは、大変な労力がかかります。また、私たちは夏、同じ気温でも、湿度が高いとより暑く感じ、風があると涼しく感じます。これを包括かつ定量的に捉えられるようにするのが統計手法です。

    品質管理は統計手法で分析しルーチン業務にまで落とし込まれれば、下図のQC管理7つ道具で管理するのが知られています。そこに至るためには、開発に携わっている技術者にとっては要因の分析が重要です。

QC7つ道具とは?新QC7つ道具とあわせて使い方をわかりやすく紹介 | ツギノジダイ

https://smbiz.asahi.com/article/14809855

 多数ある要因を整理して、どの要因がどのように強く、製品の何の性能に影響するか。他の要因との相互関係はないかを分析するには、統計手法が用いられます。是非とも品質向上のために統計手法を勉強することを勧めます。

 様々な手法がある中で、特に「実験計画法」、「多変量解析」、「田口メソッド」はマスターすべきと思っております。

 

実験計画法

実験計画法は基礎です。まずマスターしてください。

例えば、上の図は体感温度に対する、湿度と風速の関係です。気温35度のとき、無風状態では非常に暑く感じます。しかし、風が吹くといくらか涼しく感じます。ただし、湿度がし10%の乾燥した気候の時と、湿度80%のムシムシした時では同じ風速では涼しさは変わります。乾燥していると汗が蒸発して体温を下げ、それをさらに風が吹き飛ばしてくれるからと思います。

 このように、要因がいくつかあって、要因間が相互に関係しあって、製品の性能に影響を及ぼすときの分析に実験計画法は役に立ちます。

 実験計画法は、統計手法が品質管理、品質向上のためにどのように使えるかの基本を学べます。しっかりマスターしてください。

 

多変量解析

多変量解析は、多数の要因が品質に与える影響を総合的に分析することを目的に用いられます。複雑に絡み合った要因の中から、かなり大雑把ですが重要な要因を抽出できます。そしてそれらの要因の相互作用も推定できます。多数の要因が発生したデータを同時に分析し、変数間の関係性を明らかにし、全体像を知る技法です。抽出された重要要因については後述のタグチメソッド等で詳しく評価されます。

 

タグチ(田口)メソッド

タグチメソッドは奥が深く、習得するのは時間がかかります。しかし、開発技術者は是非ともマスターしてほしい統計手法です。前述のように製造時、配送・保管時、ユーザ使用時、ユーザ保管時それぞれの時に、不良率もゼロに近く、故障もせず期待される性能を出せるように開発設計しなければなりません。そのために必要な手法です。

 簡単な例として、下図の砂時計を例に取って説明します。カップラーメンの待ち時間3分を精度20秒で測る砂時計を例に取ります。まず、ユーザがどの製品を選んで買っても、また常識的な使い方をする限り、精度20秒以内にしなければなりません。

  製造時の穴の径のばらつきが精度のばらつきに直接影響します。ただし、砂径の平均によっては穴径の精度への影響の大きさも変わると予想されます。穴径のばらつきと砂径のばらつきは互いに精度に関係します。これらの要因のばらつきはノイズとなります。砂の容器のサイズや形状によっては径のばらつきと砂径のばらつきの精度に与える影響が軽減される可能性があります。また、精度を保証できるように、部品仕様を決めなければなりません。要因のばらつきに対して製品性能が影響を受けにくくすること、すなわちロバスト性向上は製品設計にかかっています。

 このロバスト性の評価に用いるのがタグチメソッドの大きな役目です。製造段階でのロバスト性が高ければ、製造コストが下がります。ユーザに渡ってからのロバスト性が高ければ、製品にたいする信頼性

が増し、メーカーの評判も高まります。

https://ameblo.jp/satsuma-no-3153/image-12703795669-15014833454.html

 

前述のように、タグチメソッドは奥が深いです。独学でなく、先生についてしっかり身に付けることをお勧めします。

 

組織で取り組む

前述では個人が習得する統計計算手法を取り上げました。ただし、品質管理は組織的に取り組まなければなりません。代表的なものにISO9001があります。国際的に認められます。

また、シックスシグマ活動もあります。

どちらも、ここで簡単に説明できるレベルでなく、組織を挙げて取り組むものです。私も数十年前、1員としてISO9001に取り組みましたが、外部認証機関による定期的な更新審査の前の準備が大変でした。

1人として脱落者なく覚悟を決めて継続しなければなりませんでした。しっかり認証を継続するにはかなりの労力がかかります。

 

ここでは、手法について表面的概要だけ説明してきました。前述のように品質事故は企業の存亡にかかわります。表面的説明に納得せず、専門家に指示を仰いで基礎から習得してください。生兵法は大怪我の元です。

 

まとめ

ロバスト性の高い製品を開発するために、統計手法をマスターしよう

 

一休み

 「梅にウグイス」と言われますが、これはウソです。正しくは「梅にメジロ」です。ウグイスが梅の花に止まっているのを見たのは1回限りです。メジロは花が大好きです。野鳥マニアにとってはメジロは珍しくないので見向きもされませんが、花にとまるメジロはかわいく絵になります。今回はメジロを特集しました。写真はすべて洗足池公園で撮りました。

 

一社)光融合技術協会社団法人光融合技術協会の技術紹介その9 プログラム活動、ンソーシアム活動

前回からに引き続き

  1. プログラム活動 ”基盤技術研究開発“
  2. コンソーシアム活動 ”市場・技術情報共有化活動” 

 の2活動をご紹介いたします。

 

 

 

以上

 

 

 

優秀な技術者になる、優秀な技術者を育てる  その10 品質・ロバスト性向上 前編 三現主義

 その10 品質・ロバスト性向上 前編 三現主義

 

  1. 品質トラブルの深刻さの再認識

最近、小林製薬の「紅麹」成分入りサプリメントを巡る問題は記憶に新しいと思います。世界の巨大企業でも、ボーイング: 737 MAXの墜落事故は、設計上の問題や品質管理の不備が指摘され、ボーイングは大規模なリコールや生産停止を余儀なくされました。サムスン電子は 2016年にGalaxy Note 7のバッテリー発火問題が発生し、製品のリコールと販売停止に至りました。

「火を噴く電気製品 イラスト フリー」の検索結果 - Yahoo!検索(画像)

 

品質トラブルは企業の存続を脅かしかねない重要問題です。技術者はどのように対応していくべきか考えていきます。

 品質トラブルは大きく分類すると、設計段階と生産工程で発生するトラブルがあります。生産工程での品質トラブル対策には作業管理等職場全体の課題となりますので、ここでは開発に携わる技術者が考えなければならないことに注目してみます。品質は開発初期段階から取り組まなければならないからです。

開発技術者にとっての

「品質とは出荷時の不良率の低さでは無く、ユーザから見た信頼性である。」

 

2. 私の苦い経験

数十年前、私は生産技術開発に携わっていました。まだ、ブラウン管テレビの時代、電子銃の部品組み立て装置開発で部品の位置決め検出装置の開発を担当していました。装置が出来上がり、工場で稼働テストを始めました。すると夕方になると装置が暴走しました。調べてみると、装置の置いてある部屋に夕日が射しこみ、ある条件の時、私の担当した部分の光センサーに太陽光が直接入射していました。

また、ときどき、装置が誤動作することが発生しました。なかなか原因が分かりませんでした。工場の担当者と検討会を開いて分かったことは、誤動作したとき、ちょうどとなりの部屋の大電力を消費する装置がたまたま稼動するときと一致しました。電源線を通してパルスノイズが混入したのが原因でした。

 対策は簡単にできましたが、最大の過ちは開発中に、設置環境を十分調査していなかったことです。つまり反省点は三現主義の軽視と正常に作動する条件の追求を怠ったからです。

 

3. たくましい野生児 か 深窓の令嬢か

 今開発している製品は見た目は良いが何かあるとすぐ体調を崩す「深窓の令嬢」のようにしますか、あるいは「たくましい野生児」のように、ちょっとやそっとダウンしないようにしたいですか。たくましい製品にするには開発初期段階から意識して取り組まなければなりません。そのキーワードが「三現主義」です。

開発技術者にとって、品質とはうり2つの同じものを、正確に作っていくこともさることながら、

「ユーザの通常の使い方において初期性能を寿命まで維持する物を作ること」

と考えてください。初期性能が良くても、すぐ壊れるとユーザからは品質面で信用を著しく落とすことになります。

 

4. 三現主義

4.1 生産技術の三現主義

私は生産技術を担当していましたので、三現主義を叩き込まれました。三現とは

「現場」、「現物」、「現実」

で、机上でデータだけを見るのではなく、実際に現場に足を運び、現物を手に取って観察して、現実を認識することです。

 生産技術の場合、生産現場に入り込み、製造途中の製品を手に取り、設計通り生産されているかを見ます。もし、設計からわずかでも偏りがあるなら、原因を詳しく調べます。原因はいくつもあり、それらが絡み合っているかもしれません。購入部品も納入元の生産現場に入る必要があるかもしれません。

「三現主義 イラスト フリー」の検索結果 - Yahoo!検索(画像)

4.2 開発技術の三現主義 ロバスト性向上

 開発技術者の場合、生産技術と様子がかなり異なってきます。製品はもともと、ロバスト性が高いほど品質トラブルの発生は少なくなります。ロバスト性とは、様々な外部の影響によって影響されにくい性質のことです。

 例えば設計公差が大きいほど、製造で不良品が生ずる率は少なくなります。使用環境で許容温度範囲が広いほど、稼動トラブルを起こす回数は少なくなります。振動に強ければ搬送時の損傷は減ります。以前、携帯が持ち方で受信状態が悪くなると話題になりました。

 製品は製造段階から寿命に至るまで、様々な条件にさらされます。何の条件においてどのように気を付けて開発すれば良いのでしょうか。

 やはり、開発段階から三現主義の思想で品質を考えていかなければなりません。まず、開発技術における現場とはどこかとの課題があります。試作の生産ラインはもちろん現場です。最も重要な現場は「ユーザが製品を使用している場」です。新製品のテスト現場もあります。新製品は難しくても、旧製品、競合他社製品の場合は、努力すれば機会が得られると思います。B to Bの製品の場合は特にユーザの使用中に立ち会うのは難しいと思います。修理センターで旧製品の修理現場の観察、あるいはサービスマンと出かけるのも一案。ユーザの使っている場に立ち会いたいものです。

 実際の現場に行けないのなら、仮想現場を頭の中に作ることになります。思いつくのは、設計では必ず行うDR(デザインレビュー)を最大限利用することです。検討項目を羅列すると下記のようになります。

操作性、使用環境・条件、安全性、信頼性、法令、規制、規格、環境への配慮、製造能力

これらを「現物」の試作品を見ながら論議します。DRには関係者だけでなく、旧製品のユーザや、専門家も入ると良いでしょう。関係者の知識を共有して、頭の中でユーザが新製品を使っている現場のイメージが浮かび上がってくればベストです。

 このような現場体験で、新製品の使用条件が浮かんでくると思います。車の中に置き忘れるかもしれません。その場合は保存温度が70~80℃に耐える必要がでできます。仮想現場に入り、現物物を観察しながら、現実を追求していきます。

 

 大切なことは

「品質は開発初期段階から三現主義に即して、作り込んでいかなければならない。」

です。

4.3 5ゲン主義

 最近は、さらに5ゲン主義があります。

5ゲン主義とは、現場、現物、現実の三現主義に、原理、原則を加えた考え方です。

原理・・・物事を成り立たせる法則や、それを起こすメカニズム等のこと
原則・・・多くの場合に当てはまる物事の決まりや規則のこと

5ゲン主義では、三現主義で問題に向かう気持ちを持ち、「原理」から外れている事柄は無いか、「原則」と異なることが発生していないか、という視点で物事を捉えることが大切という考え方です。問題解決への取り組み方です。(カイゼンベース株式会社 資料https://kaizen-base.com/column/30948/)より

まとめ

ユーザからの品質評価は開発技術者の三現主義から生まれる。

 

つづく 次回予定: 品質・ロバスト性向上 後編 分析手法

 

一休み

 今回は絶滅危惧Ⅱ類に指定されているコアジサシです。絶滅と言っても我東京都大田区の海岸や運河で夏にはよく見られます。ハトくらいの大きさですがスタイルは良く、羽を広げて飛ぶ姿はカッコ良いです。

 

 

一社)光融合技術協会社団法人光融合技術協会の技術紹介その8 会員向け個別問題解決・試作

    (プロジェクト活動)

光融合技術協会は開発のお手伝いをします。

  光・成膜関連で困ったら、是非、連絡を!

次回に続く

優秀な技術者になる、優秀な技術者を育てる  その9 プレゼンテーション力「相手が聞きたいことを話す」は間違い

1.研究者・技術者の最大の武器はプレゼンテーション

創造的職業の代表に芸術家と研究者・技術者がいます。前者の芸術家は作品を直接できるだけ多くの人に鑑賞してもらうことに精力を傾けます。ところが後者は成果を直接多くの人に評価してもらうことは難しいです。大きな実験装置を前に多大な時間をかけで実験しなければならないかもしれません。また、試験管の中の目に見えない小さな素材かもしれません。

そのため、研究者・技術者が自分の成果をアピールするにはプレゼンテーションが最善の策です。プレゼンテーションが最大の武器です。プレゼンテーション力のあるものが勝つのです。よく言われる報連相を大切に。

 

2.  プレゼンテーションは「聞き手の知りたいことを話す」は間違い

 プレゼンテーション力の高め方の教科書に載っているアドバイスに「自己主張ではなく聞き手の知りたいことを話す」とありますが、これは「ウソ」です。 正しくは「私の主張を理解してもらう」です。

 部長とエレベータの中で一緒になりました。部長:「あれどうなっている?」、私; 「順調に進んでいます。」 部長は知りたいことを得られ満足してエレベータを降りました。せっかくの機会損失です。代わりに

私: 「予定通り進んでいます。ただし100万円の〇〇の装置があれば、さらに1か月開発を短縮できます。」

と言ったら、部長は首を傾げ「後でもう少し詳しく聞かせてくれ!」。 これがプレゼンテーションです。たった1分未満。

https://www.irasutoya.com/2018/10/blog-post_65.html

 

3. どこでプレゼンテーションを学ぶ?

 私の孫はアメリカの小学校2年です。アメリカの小学校では毎月のように皆の前で何らかの発表会をしています。ところが、日本ではプレゼンテーションの練習はどこでやってくれるのでしょうか。

私はプレゼンテーションがうまかったとは言えません。ただし、長年にわたりマネージャとして、様々な方のプレゼンテーションを聞いてきました。聞く側に立って実体験から考察してみます。

 

4.プレゼンテーションは3種類 1分 5分 15分

 プレゼンテーションは3種類 1分 3~5分 15分 に分類できます。もちろん、30分、1時間もありますが、セミナー等の講演のためで、ここでの一般技術者のプレゼンテーションとは区別します。30分以上の講演を聞くのはよほど中身が無いと苦痛です。

 

4.1隙を与えない1分のプレゼンテーションのために 

1分の例は前述のように立ち話の報告です。相手は大きく分けて上司、同僚、外部関係者等です。たった3種類の相手です。それぞれにもし会ったら何を話そうかと心つもりしていることをお勧めします。

常に心づもりをしていないと、とっさには言いたいことは出てきません。常に隙を与えない武士のたしなみと同じです。

 

4.2  3~5分のプレゼンテーションでマイクを切らせないために

 3~5分のプレゼンテーションは、自己紹介とか、プロジェクト推進会議でのメンバー各人が順番に進捗報告する場合があります。

 3分のスピーチでマイクを切られたことがニュースになりました。3分ずつ、自己紹介されて、覚えているでしょうか。10人もいたら、最後の方の話は頭に残らないと思いませんか。どうしたら、自分の発言に注意を向けてもらえるでしょうか。私がお勧めすることはA41枚のレジメを作っておき、直前に配っておくことです。あなたのスピーチだけ印象に残ってもらえます。用意しておいたスライドを2~3枚映してもらうの も良いでしょう。先ずは、時間を守ること。

 

4.3  15分は最も基本のプレゼンテーション形態

15分は最も基本のプレゼンテーション形態です。プレゼンテーションの方法に関する教科書もほとんど15分を意識して解説してあります。非常に大切なので必ず何冊か読んでください。同じ内容を改めてここで詳しく述べる必要はないと思いますので、私が気になる特に重要なことだけ触れます。15分になると必ず、スライドあるいはレジメに沿って話すことになります。プレゼンの成否はほとんどこれらの作り方に左右されます。学会では聞くに堪えない発表が多いです。良い機会なので、指導者は徹底的に発表の指導をしてほしいです。

良いスライドができたら、ゆっくり、はっきり、丁寧に、聴衆の顏を見て話せば成功です。

 

良いスライドを作る

スライドの例

 

  1. 英語が苦手な方の英語での発表

私は若いころアメリカに留学しました。しかし、英語は苦手でした。学会発表になって、指導教官(世界的に有名な教授)から以下のように指導されました。

あなたの英語を誰も理解できないと自覚すること。

日本語の発表の時と比べて言いたいことを半分に減らすこと。

スライドだけ見れば言いたいことが伝わるように、できるだけ文章も入れること。

ゆっくり喋る

学会では質問の意味が聞き取れなかったら、議長に助けを求めること。

このようにすれば、自信を持って発表できます。

以上

 

一休み

 今回は公園の池で必ず見られるカルガモです。 6月1日に雛が孵りました。生まれたての雛です。生まれてすぐに自分で餌を取ります。たくましいです。今年は洗足池で、3家族計12羽の雛が生まれました。しかし、1か月経って、いま3羽だけ残っています。蛇とかカラスに食べられました。自然は厳しいです。

 

一社)光融合技術協会社団法人光融合技術協会の活動紹介

 その8 子供教室

子どもたちに光の不思議を楽しんでもらおうと、岡山の小学校で子供教室を開きました。20人強の子供が集まり、レンズで遊んだり、簡単な顕微鏡も作ってみました。

次回をお楽しみに

優秀な技術者になる、優秀な技術者を育てる その8 技術者は花形選手 ! コスト意識を持とう

技術者は花形選手 !   

 100円の製品があります。この製品を作る費用(製造原価)を50円、その他販売費、管理費等が40円としたとき1個売る毎に10円儲かります。この時、製造原価を技術によって1割すなわち5円コストダウンすると、儲けは1.5倍となります。会社の利益を1.5倍にすることは大変なことです。しかし、努力すれば技術者1人の力でできるかもしれません。

 花形選手になれるのです。

 かなり、大げさに表現しましたが、そのためには技術者はコスト意識を持たなければならないのです。目の前にお金が埋まっています。ただし落とし穴もあります。

 

製品価格の構造

ご存じとは思いますが、下図はある製品を販売して収益を得るときにかかる費用の分析です。

かかる費用は大きく分けて、図中に記載しているように固定費と変動費があります。

    固定費は売上高に関わらず必要な費用です。変動費は売上高に比例してかかる費用です。グラフから、売上高がある値以上にならないと利益が得られません。この時の売上高を損益分岐点と言います。固定費が少ないほど売上高が少なくても利益が得られます。損益分岐点が低くなります。変動費が少なくても同様です。

固定費と変動費、各詳細の中で、朱記してあるのは技術に深く関与されるものです。 ただし、技術にも製品開発技術と製造技術があり、この2つの技術が複雑に絡み合って費用が決まっていきます。材料費などは購買係の腕の見せどころの部分もありますが、基本は技術が買うものを決めます。

 これらから製品販売にかかる費用の実に6割以上が技術内容によって決まると言って過言ではありません。技術者は強くコスト意識を持たなければなりません。製品開発技術者は製品開発の最初から部品、材料費のコストを、製造技術者と共同して組み立て調整人件費、設備費、設備稼働費、消耗品費等のコストを意識して下げる努力をしなければなりません。

 

資本回転率

 認識してほしい会計用語に回転率があります。総資本回転率と運転資本回転率とかあり、詳しく知る必要ありません。投入したお金が製品を売ることにより、どれだけの期間で取り戻せるかです。魚屋は仕入れたその日に売り切らなければなりません。本屋は新本が積まれています。半導体製造は高い装置で長い工程を経てやっと出来上がります。コンピュータ1つで商売している人もいます。業種によって大きくこくなりますが、製造業では数か月程度と思われます。短いほど少ないお金で安定な事業をできることです。

 技術者にとってはできるだけ安い設備で、短期間のリードタイムで、付加価値を高めるように開発努力することが回転率を上げるために求められます。

 

開発遅れにより逸する利益

 製品を開発している技術者にはスケジュール遅れが頻繁に遅れます。様々な原因があるとは思いますが、スケジュール遅れが金銭面でどのような影響があるか、考えたことはあるでしょうか。

 電気製品等は短いもので1年毎にモデルチェンジされます。スマホのモデルチェンジもそのくらいの頻度で行われます。時期も春頃が多いのではと思います。この周期に乗り遅れると大変な逸失利益となります。

上記のグラフにおいて、黒線は計画通り開発が完成して、市場投入できたとき、赤線は開発が遅れて市場投入が遅れた場合のグラフです。世の中の流れにおいて、製品の売れる時期は大体決まっています。夏物は夏になってからでは売れません。売れなくなる時期も決まっていますので、市場投入が遅れれば売れる期間が短くなり売り上げも減ります。また、競合相手にも先を越されます。ただし開発にかかる費用は人件費を含めて多くなります。両方が絡まって期待した利益は大きく落ち込みます。 技術者はこのことを十分認識しておかねばなりません。

 「なぜ遅れたの?」、「だって難しかったもん ! 」と簡単には言い訳しない方が良いと思っています。

品質事故による損失

 今まで、製品の品質トラブルにより傾いた会社が数多くあります。最近では小林製薬の紅麹のニュースがありました。品質問題は開発設計、製造、出荷検査の各段階での原因がありますが、製造、出荷検査ではミスポカ防止等の様々な形で品質維持のための教育がされていると思います。それでもゼロにはできていませんが、たとえ市場にでてもその製品だけの問題となります。

 ここで大切なのは、開発、設計段階の上流での品質評価努力です。設計ミスで市場に出てから品質問題が起こると、すべての販売された製品を修理あるいは廃棄しなければなりません。自動車などで、時折耳にするリコールです。莫大な損害が生じます。技術者はこのことを非常に意識しなければなりません。

 大切なのは、試作品の徹底的な評価です。ユーザーは設計技術者の及びもつかない環境、使い方をするかもしれません。設計ミスもさることながら、試作品評価において使用可能な範囲を把握し、マニュアルに明記しなければなりません。製品開発のできるだけ上流で品質確認する努力が必要となります。

 品質管理については、奥が深いので、別の機会で論じたいと思っています。ここでは、技術者が手を抜くと莫大な損害を会社に与えかねないことを認識していただければと思います。

 この辺りについては「フロントローディング」および「ロバスト性」をキーワードに調べてください。

まとめ 私の意見

 このように、会社の業績は大きく技術に左右されます。技術者は技術に埋没するばかりでなく、会社全体を意識しなければなりません。自分の仕事の結果の良し悪しがどのように会社全体の業績につながっていくかを考える必要があります。先ずは目の前のコストに注目してみませんか。

 私が思うに、技術者はタレントです。花形選手になれます。会社業績の浮沈に大きな影響を与えます。気になりますのは、今の日本企業の技術者への評価方法です。一人一人の技術者の全体への寄与の見える化ができるかが課題と思います。

 参考になりますのは、サッカー選手です。彼らは、常に全体を見ながら動きます。パス等、敵、味方の次の動きを予想してプレーしています。わずかのミスも許されず、攻めと守りを両立させます。そして花形選手には莫大な報酬が与えられます。一握りの花形選手にあこがれて皆が頑張ります。子供にも将来の夢となります。技術者のあるべき姿に似ているように感じます。

 花形技術者に1億円、2億円のボーナスをあげたら、どうなるでしょうか。

 

次回をお楽しみに

 

一休み カワセミ

 今回は、野鳥観察定番のカワセミです。それほど珍しい鳥ではなく、都内でも池や小川があり小魚がたくさんいる公園ならば、かなりの確率で見つけられます。池や川に張り出した枝にとまり、魚を狙っています。枝からは斜めの視線で水の中を見ているので、カワセミは偏光メガネをかけていると言われています。斜めの角度で水面を見ても、通常は水中の魚は見えません。その時、カメラの偏光フィルターを通してみると、魚が見えるようになります。試してみてください。

 

一社)光融合技術協会社団法人光融合技術協会の技術紹介 その7

        光融合技術協会による海外技術開発機関との連携の支援・調整  Part2/2

  私共の鈴木理事はドイツを代表する研究所フラウンホーファー研究所の中のFEPの日本代表を兼任しています。この関係から海外の研究機関と密接なつながりがあります。前回に続いて、その一端を下記鈴木理事のスライドを通してご紹介いたします。この件に関しましてお問い合わせがある場合はkoichisuzuki@surftech.co.jp あるいは akira.ono1257@gmail.com 

にご連絡ください。

一般社団法人光融合技術協会のホームページはhttps://www.i-opt.org/です。

次回に続く

優秀な技術者になる・優秀な技術者を育てる  その7 開発スケジュール管理

優秀な技術者になる・優秀な技術者を育てる  その7 開発スケジュール管理

 

「無理をさせ 無理をするなと 無理を言い」

昔、このようなサラリーマン川柳があったことを覚えています。ひょっとすると課長が悪いのではなくて、あなたのスケジュールが詰まっていることを報告できていないのではないのでしょうか。

開発プロジェクトを計画的に成功させた代表的例はアポロ計画ですが、巨大すぎて世界が違います。今回は、一般的な開発プロジェクトにおいてスケジュール管理の大切さについて考察してみたいと思います。

 

1.スケジュール策定前にすべきこと。

開発企画はトップレベルで行われるので、ここでは企画ができた後、開発スケジュールに落とし込むときしなければならないことに触れていきます。

 

開発課題のブレークダウン、各項目の成果の明確化見える化

 このブログの「モチベーション 後編」において最終目標を系統立てて、分解して、1週間ごとの目標に落とし込むことを推奨しました。開発スケジュールでも、1週間毎、少なくとも2週間毎の目標に落とし込むことが大切です。さらに目標は定量的に表す必要があります。これが詳細なマイルストーンとなります。

 このように、詳細なマイルストーンに落とし込むために前回、紹介しました。ドリルダウンツリーがあります。最近はWBS(Work Breakdown Structure)とも言うようです。定量的なマイルストーン策定のためのドリルダウンツリー例を示します、

 計画の進捗がメンバー全員に一目で分かるようにしなければなりません。そのために定量的なマイルストーンが必要です。

 開発プロジェクトの開発項目の代表的分野は「機械系」「電気系」「ソフト系」です。これらの中でもっも開発担当者が何をやっているのか見えないのが「ソフト系」と思っています。ソフトの開発担当者がある日突然病気になり入院、静養しなければならなくなったとき、代わりの担当者があくる日から開発を引継ぎできますか。最悪の場合、振り出しに戻って開発しなおすこともあり得ます。それほどソフト開発の「見える化」は特に大切と思っております。もちろん他の分野でも大切です。

 今はソフト開発ツールが整ってきました。例えば私の分野ではレンズ系設計ソフト等があります。一昔はアセンブラとかC言語で開発されていましたので私には中身がまるでわかりませんでした。しかし、今でもソフトを甘く見てはいけません。

 ソフト開発の見える化の重要性については以前から論じられており、開発体制がしっかりしているかの評価基準がありました。CMM®(CMMI®)では、組織のプロセスの発展段階を5段階の成熟度レベルでモデル化しています。その成熟度レベルをモデル化したものが下表です。詳しくは次のURLの記事をご参照ください。

https://www.compita-japan.com/kaisetsu/what-cmmi-2.html

 

 私はソフトウエア開発の見える化のための具体的手法については詳しくありません。そこで、インターネットで調べました。その中で目に止まった手法には、下記2点がありました。特にソフトウエアに特化していませんが、ソフトウエア開発を強く意識した手法に思います。

   https://www.splunk.com/ja_jp/data-insider/what-is-ci-cd-pipeline.html

  • カンバンボード

   https://www.atlassian.com/ja/agile/kanban/boards

是非とも参考にしてください。

見える化は非常に大切です。特にソフト開発を甘く見てはなりません

 

2. スケジュール表の作成

これは全体の中のユニットAの開発スケジュールを例に取ってあります。特徴を箇条書きします。

  1. 全体の最下段はマスタースケジュールです。
  2. 上の段はユニットAを担当するチーム全員のスケジュールです。
  3. ▲はマイルストーンです。
  4. マイルストーンは2週間間隔程度で記入することを進めます。
  5. 斜めに引かれた矢印はそれぞれの担当の成果を誰にいつまでに渡すかを表しています。
  6. この印が急峻であるほど、スケジュールが詰まっていることを表しています。
  7. マイルストーンには定量的目標値を定め、別途、チームで共有します。

裏のテクニック

 1. 完成に要する見込み時間に10~15%のサバを読みましょう。

   予定外の追加の仕事が入ります。能力の過信があります。

   遅れると他のメンバーに迷惑が掛かります。

2. 一部開発を委託したとき、頼んだ相手にも同様なスケジュールを書かせましょう。

   頼んだ仕事は多分、遅れます。

3. スケジュール表は皆の見える所におきます。

   引き出しやファイルに入れてはだめです。

4.難易度の高い要素のコンテンジェンシープランは最初に立てておきます。

   仕様ダウンとなりますので経営的判断が必要となります。

   壁にぶつかってから立てたのでは遅くなり、手遅れになります。

 

3. スケジュールフォロー

 スケジュール表を作ったら、それで完成ではありません。これを基にフォロー会議を定期的に行います。前述のスケジュール表の中でDRとあるのはデザインレビューです。DRではその時点での完成したものを皆の前で発表して評価を仰ぎ、各要素を統合して、計画通り開発が進んでいるかを判断します。小班内では1週間ごとに、全体では1か月毎に普通行われます。計画通りに開発が進んでいない場合の対策審議も重要です。

 スケジュール表例の赤い折れ線は各ユニットごとの進捗の判定結果です。スケジュールの進捗判定は自己判断しないでください。デザインレビューの席で定量マイルストーンを参考に判断はプロジェクトマネージャが行います。

 デザインレビューの結果、進捗遅延等の不具合が生じたとき、スケジュールを修正しますが、元のスケジュールに色を変えて加筆するか、新しいシートを作成しても元のスケジュールは目につくところに置いてください。反省の材料となります。過去の遅れは「チャラよ」としないでください。

 チームの他のメンバーの進捗にも気にしてください。火の粉が降ってくるかもしれません。

  1. フォロー会議は定期的に行う。チームは1週間毎、全体は1か月毎に。
  2. 進捗はプロジェクトマネージャが定量化されたマイルストーンを基に判定する。
  3. 過去の遅れを「チャラ」にしない。反省の材料とする。
  4. 他のメンバー進捗にも注意を向ける。

 

4.全体まとめ

  先ず「見える化」から始めよう

 

一休み ジョウビタキ

 今回も都会の公園で冬季見られるジョービタキを載せます。撮影はすべてホームグラウンドの洗足池公園です。通常、鳥はオスの方がカラフルでかわいいのですが、私の好みはジョウビタキに限ってはメスの方が目がクリクリッとしていてかわいいです。冬に公園で探してください。春先までいるはずです。



一社)光融合技術協会社団法人光融合技術協会の技術紹介 その7

        光融合技術協会による海外技術開発機関との連携の支援・調整  Part1/2

  私共の鈴木理事はドイツを代表する研究所フラウンホーファー研究所の中のFEPの日本代表を兼任しています。この関係から海外の研究機関と密接なつながりがあります。その一端を下記鈴木理事のスライドを通してご紹介いたします。この件に関しましてお問い合わせがある場合はkoichisuzuki@surftech.co.jp あるいは akira.ono1257@gmail.com 

にご連絡ください。

一般社団法人光融合技術協会のホームページはhttps://www.i-opt.org/です。

次回に続く


 

 

 

 

 

 

優秀な技術者になる・優秀な技術者を育てる  その6 発想力

優秀な技術者になる・優秀な技術者を育てる  その6 発想力

 発想力と創造力、似たような混同しそうな言葉ですが、前者は新しいアイディアを生み、後者はそれを具現化することです。今回は先ずは発想力についてお話しします。

 

ゼロからアイディアを生み出すことはまず不可能で、普通は1+1=3のケースです。

2つ以上の独立した知識の組み合わせ、工夫することにより、今までにない新しい価値を生み出すことです。

例えばアインシュタインの相対性原理ですが、ゼロから考え出されたものではありません。逸話になりますが、ガリレオ・ガリレイの相対性実験とマイケル&モーリーの光の速度測定実験の結果等を深く吟味することにより生み出されたと言われています。

ガリレオの実験では、動いている船のマストの上からものを落とすと、船上ではまっすぐ落ちてきます。しかし、岸から見ると、物は船と共に動いているので、物は弧を描いて落ちてきます。岸から見た方が長い距離を描いて落ちてくることになります。観測者によって変わる事を発見しています。

 一方、マイケルソンとモーリーは干渉計の1軸を南北に、他方の軸を東西に向けて干渉縞を観察しました。次に、90度回転して同様に観測しました。もし、そのころの理論による光がエーテルの中を進むならば、東西は地球の自転運動方向なのでガリレオの相対性原理から90度回転前後で干渉縞が変わるはずでした。しかし、変わりませんでした。これは観測者によらず光の進む速度は変わらないことを示しています。(マイケルソン・モーリーの実験 - Wikipedia)

 アインシュタインはこの実験結果から有名な相対性原理を導き出しました。さらに理論構築にはリーマン幾何学の助けを借りました。リーマン幾何学を紹介したのは友人です。

 このように、偉大な発想には幅広い知識、知人からの助言等を土台にしたひらめきが必要となります。

発想の瞬間はいつ?

 ニュートンの有名な逸話に、リンゴが木から落ちるのを見て、万有引力の法則を思いついたとのことです。小石川植物園にそのリンゴの木の子孫が植えられています。アイディアに悩んだらその木を見に行かれることをお勧めします。

 アルキメデスはお風呂の中で王冠の比重から真偽判定する方法を発想しました。

 これらは、実験室や机の上で発想していません。仕事に没頭しているときより、リラックスしていた時に、ふっと思い付くことがあります。人間の脳の仕組みに理由があるようです。息抜きしているとき、脳の中の回路が断片的な記憶をフレキシブルにつなげたり、切ったりするようです。

ひらめきと記憶の正体 脳の解明が認知症治療につながる | NHK健康チャンネル

ただし、単に息抜きをしていても何も生まれません。それなりの生みの苦しみが必要です。

 

発想に至るまでの必要な過程

発想のために必要な要件は

  • 課題が明確なこと
  • 課題について使命感を持っていること。常に思案していること。たまに息抜きが必要なこと。
  • 専門分野以外に幅広い知識を持っていること、さらに幅広い分野での相談相手を持っていること。
  • 出来れば、ブレインストーミング、TRIZ等の手法を試してみること。

が挙げられます。

 

  • 課題が明確なこと

上司から今の製品の性能を向上させて売り上げ向上を指示されたとします。指示は抽象的です。先ずは何の性能を向上させれば良いか明確にしなければなりません。このような時の手法として下図のようなドリルダウンツリーで分析していく方法があります。この表から抽象的な命題から具体的課題にブレークダウンしていく過程が分かると思います。

次にブレークダウンした開発課題群の中から何をどのように実行していくかの作戦を練らなければなりません。開発企画の立案です。そのためには 「お客様の振る舞いを見る、お客様の声を聞く」が必要です。

「お客様の声を聴け」とよく言われます。非常に大切です。ただし、お客様の声をそのまま鵜呑みにするのは問題があります。不具合点を針小棒大に言ったり、本質からズレたことを思い込みでいう可能性があります。

 昔、教育で「お客様の振る舞いを見よ」との話がありました。ライトバンの設計者に上司がスーパーの駐車場に行って良く観察してこいと指示しました。ライトバンの主なユーザは主婦です。主婦が毎日買い物に使っています。どのように使われているか、自分の目に焼き付けてこいとのことです。

 次機種の企画を行うには、技術者が開発担当する製品がどのような使われ方をしているか肌で感ずる必要があります。真のニーズを知れば次機種には何を性能向上すべきか課題が明確になります。使命感も生まれます。

 

(2)  課題について使命感を持っていること。常に思案していること。たまに息抜きが必要なこと。

    現状機種の技術から企画した次機種開への技術ギャップが解決すべき課題となります。このギャップが大きいほど、お客様の望む姿に近いほど、達成した時、競合他社に差を付けられます。達成感もあります。

 課題の解決には通常新たな発想が必要です。新たな発想を必要しない次機種はすぐに他社にまねされます。技術者たるもの、言われたことしかしないのでは何も生まれません。使命感を持って大きなチャレンジに挑戦してほしいです。使命感が強いほど、解決しなければならない課題が片時も頭から離れません。

 このような追い詰められた状態で、散歩するなり、お風呂に入るなり、ほっとした時にふと良い考えが思いつくようです。ニュートンも、アルキメデスもしかりです。脳の構造によるとのことです。実験室に籠ってばかり、机にかじりついてばかりでは使命感が強くとも、良い発想も生まれません。

 

(3)専門分野以外に幅広い知識を持っていること、さらに幅広い分野での相談相手を持っていること。

 しかし、熱意と使命感と息抜きだけでは新しい発想は生まれません。材料が必要です。ゼロからは生まれません。幅広い知識を持っているが必要になります。ただし借り物の知識でも良いです。アドバイスをもらえる様々な知識を持つ人と幅広い交友関係を持つことも必要です。これらについては前にも触れた通りです。

 

課題解決、新しい発想の助けになる手法にブレインストーミング、TRIZ法があります。

 

ブレインストーミング

会議で使用される「集団発想法」であり、複数人でアイデアを自由に出し合い新たな発想を生むことを目的としています。

 

ブレインストーミングの4原則

判断・結論を出さない(批判厳禁)

粗野な考えを歓迎する(自由奔放)

量を重視する(質より量)

アイディアを結合し発展させる(結合改善)

ブレインストーミング - Wikipedia

はじめから答えを出すことは考えず、ひたすら知恵を出し合うと思いがけないアイディアが生まれます。出るだけ分野の違うメンバーが集まり、人数も最大10名を超えない方が気軽に意見が出ます。

多数テキストが出版されているので、是非手に取ってください。

 

TRIZ

TRIZは、旧ソ連海軍の特許審査官だったゲンリッヒ・アルトシュラーさんが、
250万件もの特許情報を調査し、発明における問題解決を体系化・構造化した問題解決理論・全体最適化理論です。(https://www.spinno.com/blog/archives/5377)

矛盾問題を解決するための発想手法、物理的矛盾を解消するための思考のヒントを与えてくれます。答えはくれません。

例えば、

「仕事もしたいし、遊びたい」 → TRIZからのヒント「時間による分離はどうか」→ 思いついた解決法「午前を仕事、午後は遊び」

例ですので「なんだ ! 」と思われるかもしれませんが、壁にぶつかったとき是非試してみてください。残念ながら私自身はTRIZを用いた経験はありません。

詳しく知りたい方は 「日本TRIZ協会」

日本TRIZ協会ホームページ (triz-japan.org)( http://www.triz-japan.org/)

があります。

 

まとめ

発想とは2つ以上の知識の組み合わせとひらめきにより新たな価値を生むこと

課題を明確にすること。真のニーズをしること。

使命感を持っていること。常に思案していること。

広い知識を持っていること、広く相談相手を持っていること。

たまに息抜きをすること。

ブレインストーミング、TRIZ等の手法を試すのも良い。

 

次回をお楽しみに

 

一休み オナガ

 今回は都心の公園でも良く見られるオナガです。ホームグラウンドの洗足池公園で撮りました。優雅な品を感じさせますので、私の「推し」の鳥です。玉に瑕なのは鳴き声が濁声で美しくないことです。

木彫りのバターナイフもシンプルで気に入っています。

 

社団法人光融合技術協会の技術紹介 その6  

 光学薄膜成膜法の基礎 その2

                 一般社団法人光融合技術協会は https://www.i-opt.org/

 下記資料は、一般社団法人光融合技術協会の生水理事の講演スライドの前回の続きです。もし、質問等ありましたら上記URLを開いていただいて、ホームページの中の問い合わせにご連絡いただけないでしょうか。

以上


 

 

優秀な技術者になる・優秀な技術者を育てる  その5 全体最適意識 (チームワーク力を高める)

優秀な技術者になる・優秀な技術者を育てる 

その5 全体最適意識 (チームワーク力を高める)

 

シンギュラリティは2045年に起こる?

 シンギュラリティをご存じでしょうか。コンピュータが人間の知性を超えることです。それが2045年に起こるとアメリカのレイ・カーツワイルが提唱しました。2045年以降どのような世の中が来るのかは本題からはずれるのでここでは触れません。レイ・カーツワイルが提唱した大切なことは技術革新が相互に影響し合って、加速度的に進んでいくと説明したことです。(Wikipediahttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%80%E8%A1%93%E7%9A%84%E7%89%B9%E7%95%B0%E7%82%B9

 技術革新が加速度的に進んでいますので、気を抜くと茹でカエル状態になります。技術が組み合わされて新しい技術が生まれていきますので、個人の技術だけに頼ることはできません。個人も会社も自前主義からの脱却が必要です。

 

ポケベルからスマホ、日本は取り残された。

 携帯電話を振り返って見ますと、ショルダーバックのような物を除外すると、一般人的感覚では最初はポケベルでした。若い人はもう知らないのではと思います。

「だれだれさんから電話がかかってきました」と「数字メッセージ」だけをポケベルの持ち主に伝えました。それから約40年、PHS、ガラ携、と移り、今はすべてスマホです。下図のように様々な機能を持ち、スマフォなしの生活が考えられなくなってきました。

 スマホへの進化は半導体、ソフト、通信、カメラ、モニター、画像処理、電池等の技術の組み合わせです。日本はガラ携にこだわり、取り残され、スマホには入り込めませんでした。

 これから、別の分野でも十分起こる可能性があります。

製品開発は帆船時代の航海に例えられる

 新しい技術の組み合わせで新製品を開発することは大航海時代の新天地を目指した航海に似ています。航海の計画を立てて、多額の資金を国王や富豪からの投資で未知の海に乗り出します。計画通り航海できることは皆無です。早くたどり着かねば、他の国に先を越されます。ただし、様々な未知の困難に遭遇し、それを乗り越えていかねばなりません。嵐、座礁、海賊、食糧難、反乱様々です。乗り越えるためには様々な専門を持った屈強な船乗りと、それらを束ねる強いリーダーシップを持つ船長が必要でした。

 現在の不確実性の時代の中で、複雑な技術を組み合わせて、新たな価値を生む新製品開発を計画に沿って優秀な指導者のリーダーシップの下に、優秀なメンバーが一丸となって開発を進めることができれば理想的です。

 しかし、現実には指導者も技術者も並みの能力を前提とした方が良いです。その中でどのように乗り切るかを考えることになります。チーム力がカギとなります。「優秀な技術者になる、育てる」は本稿の主題でありますが、ここでは「全体最適を目指したチーム力」について考えてみます。「一頭の羊に率いられた羊の群れは、どうすべきか。」です。

 

ネアンデルタール人は滅び、ホモサピエンスはなぜ繁栄したか

 数万年前、ヨーロッパではネアンデルタール人ホモサピエンスは同時に生存していました。ネアンデルタール人ホモサピエンスより体格も良く、頭も大きかったと言われています。しかし、現代はモサピエンスのみ生き残って繁栄しています。

なぜでしょう。ネアンデルタール人の石器等の道具の進化スピードはお遅く、ホモサピエンスの道具の進化は早かったようです。ホモサピエンス全体最適の下に協力し、知恵を出し合って、生活を改善していきました。ネアンデルタール人は高々数名の家族単位で生活していましたが、ホモサピエンス100人規模の集団行動を全体最適のために行動できました。ホモサピエンスは本能として全体最適の下に、共通価値を認識し絆を深める能力を持っていたようです。これにより気候変動等の苦難を乗り越えられたようです。まだ、仮説のようですがかなり確かな説と思います。

我々の祖先は価値を共有し「3人寄れば文殊の知恵」で生き延びてきました。

 複雑化し、変化のスピードが加速度的になっている現在、我々ホモサピエンスこの遺伝子を生かさなければならないと思います。

 

チーム力 全体最適

 複雑な技術開発を進めるには、優秀な指導者の下に、優秀な技術者が集まり、全体最適を意識して強固なチーム力を発するしくみを作り上げることである、と昔から言われてきました。現実は優秀な方は稀ですが、全体最適を意識して強固なチーム力を発するしくみは作らなければなりません。目標と開発仕様の明確化、頻繁な打ち合わせ等、基本的なことは教科書に載っています。ただ、教科書に載っているチーム力強化策は、何か「」が欠けているようにも感じます。

 このシリーズの冒頭でお話しました「技術者の目指す4つの満足」との整合が一つの課題となります。

  1).お客様の満足    (私、これがほしかったのよ。) 

  2).自分の満足       (技術者になって良かった。)

  3).家族の満足       (お父さん頑張っているね。)

  4).会社の満足       (あいつは良くやった。)

 特に最初の3つの満足です。全体と個々の整合です。仏教では、「自利利他」との言葉もありますが凡人ではなかなかその境地になれません。ヒントは「愛情」だと思っています。親が子供に抱く愛情、恋人に抱く愛情、これらはスキンシップ、アイコンタクトでオキシトシンホルモンの分泌で強くなると聞いています。

 

チームや、そのメンバーに同様な愛情を持っていれば、チームの成功の喜びをチーム全体で分かち合え個々の満足との整合が取れるのではとお思います。

ホモサピエンスの本能の「仲間意識、絆、連携、共感」を強められると思います。

 

何をしたら良いか どうするか

 今まで、思い付きを寄り道をしながら述べてきましたが、結局、古くから言われてきたことを、下記のことをもう一度振り返り実行することと思います。

アイコンタクト → face to faceの会議、懇親会、パーティ、家族ぐるみのレジャー

スキンシップ  → 握手、腕組等、ハグ ! 、ハイタッチ !

 私の時代は、会社の飲み会、運動会開催、レジャー等、社内で盛んにおこなわれてきました。今はコロナ禍もあって、社内の飲み会も激減しました。若い方々は上司と飲むのは「ウザイ」と言って避けます。

2次会費用を数万円を懐からポンと幹事に渡し、後は皆で楽しめよと言える上司を持ちたいですね。

 欧米では、初対面でもバグや握手をします。また、職場ではピクニックと簡単な野外パーティを頻繁に開きます。それで、仲間意識も強くなります。

 日本の停滞は「自前主義」がもたらしたと思っています。欧米は「オープンイノベーション」推し進めています。異文化との合流です。外の知恵も借りて三人寄れば文殊の知恵で難局の連続を乗り越えていかなければなりません。

 

 もう一度、昔に帰って、face to face、スキンシップの機会を増やすのが、これからの加速度的に複雑になる社会に非常に重要と思います。ただし、これからは、異文化の方々との絆も重要です。

 

つづく

 

一休み カッコウホトトギス

東京葛飾区にある水元公園で10月に撮りましたカッコウホトトギスです。

歌等で名前を聞くポピュラーな鳥ですね。しかし、都会で見たことはありますか。

もっと、面白いことは、カッコウホトトギスの外見の区別がつきますか。実はわたくしにも無理です。

写真に名前をつけましたが、実は?です。もう一つ、全く似た鳥にツツドリがあります。

3つまとめて「トケン類」といいます。鳴き声は全く異なります。

 

一般社団法人光融合技術協会の技術紹介 その5  

 光学薄膜成膜法の基礎 その1

                 一般社団法人光融合技術協会は https://www.i-opt.org/

 

 下記資料は、一般社団法人光融合技術協会の生水理事の講演スライドです。もし、質問等ありましたら上記URLを開いていただいて、ホームページの中の問い合わせにご連絡いただけないでしょうか。

次回につづく